自主フェラ

新任教師 美沙子





 十四

 その日、美沙子はとうとう殿井に口の中で射精されてしまった。最初の時は殿井も初めて女性に陰茎を咥えられて、それだけで感激してしまっている様子だった。しかし、二度目ともなると大分冷静さを持ってきたようで、美沙子にいろいろな咥え方を注文するまでになっていた。美沙子のほうも、そのまま果てないで口を離したら今度は犯されてしまうのではと不安になったのだ。
 さすがに放出してしまった後はそれ以上のことを仕掛けてくる気配はなかった。萎えてきたペニスを美沙子に見られないように回転椅子を回して背を向けたままティッシュで拭いながら、(あの店長の事は私に任せておきなさい。明日の放課後、脅しに使われた写真を持ってもう一度ここへ来るように。)と美沙子に命じて、振向きもしなかった。
 美沙子も口の中いっぱいのスペルマを呑み込むことも出来ず、かといって吐き出す訳にもゆかなかったので、手で抑えるようにして理科準備室を出て廊下奥の女子トイレに走ったのだった。

 翌日は美沙子も多少冷静さを取り戻してきていた。音楽の授業もピアノ伴奏を弾き間違えることもしないでこなすことが出来た。ただ気に掛かるのは、放課後殿井の待つ理科準備室へ行かなければならない事だ。美沙子はなるべくその事を考えないようにして一日を過ごした。
 殿井に言われて美沙子は自分に送られてきた恥ずかしい写真を鞄の中に持ってきていた。万が一誰かに見られることがないように、借家であらかじめ封筒に入れ、厳重に糊付けして封をしてきていた。一日、ロッカーに鍵を掛けて入れておいたその封筒だけを持って、美沙子は理科準備室に向かった。

 「見せてみたまえ。」
 今度も自分で内側から扉に鍵を掛けてから、おそるおそる美沙子は封筒を回転椅子にふんぞり返るように座っている殿井に差し出した。殿井は封をされた封筒を受け取ると傍らに置いてあった鋏で端の部分を切り取っていく。
 美沙子は自分の恥ずかしい姿を目にしたくなくて、ソファの一番奥、殿井から最も遠くなる位置に腰掛ける。殿井が自分の写真を目にする際の表情も見たくなくて、床を観ながら俯いていた。
 「ふうむ。なるほど・・・。こんなに何枚もあったのか。ふむふむ・・・。」
 殿井は一枚、一枚を丹念に眺めている様子だった。美沙子は自分が悪い事をして為に廊下に立たされている生徒のような気持ちでその場を堪えていた。
 「あの・・・、もういいでしょうか。」
 顔を上げず、手だけ差し出した美沙子の元に封筒は返ってこなかった。
 「これは私が預かっておくことにしよう。こんなものが万が一、学校の中で見つかったら飛んでもないことになってしまうからね。」
 そう言うと、殿井は封筒ごと自分の机の抽斗にしまうとポケットから出した鍵束のひとつで鍵を掛けてしまう。
 「あの店長とはその後・・・?」
 一番気に掛かっていた質問を美沙子はそっと切り出す。しかし殿井から返ってきた言葉は思っても見ないことだった。
 「君はSMっていうのは知ってるよね。」
 「えっ?」
 美沙子は聞き間違いをしたのかと思った。殿井が下宿先に訪ねてきた時に発した(フェラチオ)という言葉を聞かされた時のような衝撃だった。
 「エス、エムだよ。知らんのかね。」
 「あ、あの・・・。フランス文学者のマルキ・ド・サド侯爵とロシア文学のマゾッホという人の事ですよね。」
 美沙子は努めて教職員らしい返事をするように答えた。
 「君はどう思う? 女性の立場として縛られて鞭で打たれたりしたら、気持ちよくなると思うかね。」
 「私が・・・ですか? 気持ちよくなんかなる筈はありません。」
 美沙子の頭の中では、前に殿井から(フェラチオをすると気持ちがいいものなのか)と訊かれた時の言葉が渦巻いていた。
 「まあ、普通そうだろうね。」
 「どうして、そんな事を訊かれるのです?」
 「気持ちよくなるんじゃ、罰にはならないからね。」
 「罰・・・? どういう意味ですか。」
 「君は罰を受けなければならないという意味だよ。」
 美沙子は嫌な予感がむらむらと湧き起ってくるのを感じた。
 「あの店長と話をしてね。実はあの犯人を知っているのだが、学校としての威厳を保つ為に誰かを教えることは出来ないってね。その代り、こちらで二度とそんな事をしないようにきっちりお仕置きをしておくから、それで勘弁してくれって頼みこんだという訳だよ。」
 「そ、そんな事・・・?」
 「おや? あの店長にお仕置きをされたほうが良かったかね?」
 「い、いえ・・・。困ります。」
 「内密にさせて貰う代わりに、私がきっちりと罰を与えますと言ったらやっと承諾してくれてね。」
 「私が先生から罰を受けるのですか・・・。でも、それであったことを内密にして頂けるのですね。」
 「どうだね。私は公表してしまっても構わんとは思っているのだが・・・。」
 「こ、困ります。判りました。先生から罰を受けます。その代り、どうか・・・あの事は・・・内密に・・・お願いします。」
 美沙子はすっかりうなだれて、顔をあげることも出来なかった。
 「そこの本棚の上に箱があるだろう。それを持ってきて開けてみなさい。」
 殿井に言われてソファの対面にある本棚を見上げると、ちょっと古そうな木箱が置いてある。美沙子が立ちあがってそれを取り上げ蓋を開けてみる。
 「あ、こ、これは・・・。」
 中に入っていたのは麻の縄の束と革の鞭だった。
 「折檻という言葉は知っているだろう。今じゃ死語のようになっているがね。昔はごく普通にあったものだよ。この学校でも使われていた時代がある。昔は悪い事をした生徒は皆、それで罰を受けたものさ。」
 美沙子はさっき殿井がSMを知っているかと訊ねたことを思い起こしていた。
 「これで・・・。これで私が罰を受けるの・・・ですか。」
 「そうだ。いやかね?」
 「・・・・。」
 美沙子は唇を噛みしめてやっと答えた。
 「わかりました。罰をお受けします。」
 そう言うと、箱から縄の束と鞭を取り出して殿井に渡そうと差し出す。
 殿井は鞭を机の上に置くと、縄をしごき始めた。
 「さ、準備したまえ。」
 「え、準備・・・って。」
 「服を脱ぐのだよ。服の上から鞭を受けたって、痛みはやわらいでしまうだろ。それじゃ、罰の意味がない。」
 殿井がこともなげにそう言うのを、美沙子は自分が言われているのではないような気になりながら聴いていた。しかし、殿井は確かに服を脱げと言っているのだった。
 「わ、わかりました。」
 美沙子はくるりと殿井に背を向けるとブラウスの胸元のボタンを外し始めた。袖を抜き取ったブラウスをソファの上にふわりと落とすと、背中に手を回してブラジャーのホックを外す。
 「す、スカートも取るのですね。」
 もしかしたら上半身だけで済むかもしれないという淡い期待はすぐに破られた。
 「当り前だろう。鞭はお尻が一番適しているんだ。」
 そう言われて、今更のように下着も取らねばならないのだと悟る。スカートをおろし、最後にショーツを抜き取ると内側がみえないようにくるりとまるめてからソファーに脱いだものをそっと置く。
 どうしていいのか判らずに、殿井に背を向けたまま裸の乳房を両手で蔽って立ち尽くす。
 「手は後ろに回しなさい。」
 そう言われて、罪人が縄を受けるように手を背中で交差させる。その手首に麻の縄が荒々しく巻付かれていく。
 「ああっ・・・。」
 両手を縛られていく屈辱感に、つい溜め息ともつかないような声が洩れてしまう。殿井は縄の扱いに慣れているのか、両手を縛ってしまうと残りの縄を美沙子の裸の乳房の上と下に廻し背中の真ん中で括り上げた。美沙子は夢をみているのではないかと錯覚している。とても現実の事とは思えなかった。
 背後で殿井が鞭を取り上げた気配を感じる。
 「さあ、こっちへ来なさい。机の上に上半身を乗せて尻を突き出すのだっ。」

折檻2

 殿井に縄尻を掴まれて、半ば強引に机の上に俯せの格好を強いられる。
 「さあ、罰を受けるのだ。鞭をくださいと自分で言うのだ。」
 「えっ・・・。わ、わかりました。む、鞭を、鞭をください・・・。」
 「そりゃあっ。」
 ピシーッという音が空気を裂いて美沙子の尻に激痛が走る。
 「あううっ・・・。」
 声にならない悲鳴があがる。
 「もっとくださいと言うんだ。」
 「ああ、・・・。も、もっと・・・く、くだ・・・さい。」 
 ピシーッ。
 「あうっ・・・。」
 ピシーッ。
 「ああ・・・。」
 ピシーッ。
 「も、もう・・・。もう、赦して・・・。赦してください。」
 美沙子は殿井が振りあげた鞭を下す気配を感じ、ほっと息を吐く。美沙子には自分で机の上から立ち上がる気力も残っていなかった。しかし、その直後に背後から閃光が走ったのに気づく。
 美沙子が首を後ろに向けると、そこにはカメラを構えた殿井の姿があった。
 「な、何をなさるのです。止めてくださいっ。」
 「店長に確かに罰を与えたという証拠が必要だからな。大丈夫だ。顔は写ってない。」
 そう言うとデジカメを操作して、確かに折檻の現場が捉えられているかを確かめている。
 「ああっ・・・。もう、赦してっ。縄を解いて・・・ください・・・。」
 「ふふふ。そうだな。しかし、その前に確かめておくことがある。」
 そう言いながら殿井はうつ伏せになっている美沙子のすぐ傍までやってくる。
 「いやっ。」
 突然、内股に指が差し込まれたのを感じて美沙子は悲鳴をあげる。
 「ほうら。思った通りだ。ここが濡れてる。」
 くの字に曲げられた殿井の中指が美沙子の陰唇を捉えていた。
 「そ、そんな・・・。違います。そんなんじゃありません。」
 「ほれっ。見てみたまえ。」
 そう言って、殿井が指先を美沙子の顔に突き出そうとするのをみて、泣きじゃくるようにしながら目を伏せる美沙子だった。

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