首輪手錠

妄想小説

プール当番



 第五章 屋外放置


 圭子はうなだれて、電話ボックスへ向かう。鮫津に襲われていた時に撮られていたとは思いもしなかった。

 電話ボックスが見えてきた時、再び電話が鳴り出した。圭子はあたりを確かめると電話に向かって走り出した。パンティが脱げそうになるのを必死で抑えた。受話器を取り上げた時は、息が切れそうになっている。

 「どうだったかい。写真の出来映えは。」
 「ひ、卑劣よ。こんなことして何になるの。」
 「. . . まだ、判らないのかい。お前を服従させる為だよ。次の命令を言ってほしいかい。」
 圭子は戦慄を感じた。
 「電話ボックスの下に紙袋がある筈だ。そこから中のものを取り出すんだ。」
 言われたとおり、電話機があるすぐ下の床に、さっきは無かった筈の茶色い紙袋が置かれている。取り上げて中を確かめてみる。ガチャリという音とともに出てきたのは、ずしりと重い手錠だった。黒光りする冷たいその感触は玩具ではなく本物の様子だった。そしてその輪と輪の間の鎖にさらに50cmほどの鎖が繋がっていて、その反対側は赤い革製の、鋲が打たれた首輪に付けられた金属の輪に繋がっている。袋からは更に、黒いニットのヘアバンドのようなものが出てきた。

 「赤い首輪があるだろう。それをお前の首に嵌めるんだ。犬用の首輪だが、お前の首にはぴったりの筈だ。そしてそれから下がっている鎖を背中のほうへ回すんだ。そしたら、こんどは黒いヘアバンドがあるだろう。それを頭からかぶるんだ。一旦、首まで通せ。そうだ。受話器を電話の上に置いてよく聞くんだ。まず、そのヘアバンドを目隠しになるように上へあげろ。耳の上を通してしっかり目を塞げ。そうだ。そうしたら今度は手を後に回して、手探りで自分の手首に手錠を掛けろ。ガチャリとしっかり音がするまで掛けるんだ。」
 圭子は男の指示に従いながら、男の指図から逃れる術を考えていた。しかし、用意周到な男の指示の前には、どうすることも出来なかった。出来ることなら、この場から走り出して逃げてしまいたかった。しかし、さっきの男子用トイレで見せられた写真を思うと今は男の言うなりになるしかなかった。
 男は何処からかは判らないが自分の様子を窺っている。だから従わないわけにはいかなかった。
 ためらったが、仕方なく手をうしろに回し、手探りで手錠を掛けた。両方の手の自由が奪われるとさすがに不安になった。手錠は鎖で首輪に繋がっている為、自分の尻すらも、かばうことも出来ない。もはやパンティでさえも直すことが出来ない格好にさせられていた。
 目隠しの為、見えないが目の前の受話器からは更に男の指示が聞えてきた。
 「そのまま、その格好をそこで晒して待っていろ。」

 ツーという音がして、電話はそこで切れた風だった。視界と両手の自由を奪われた圭子は、逃げる術も奪われ、ただ、辱めを待つような格好で電話ボックスに立たされていた。

 ガチャンという音がして電話ボックスのドアが開いたのは、それから随分経ってからのような気がした。誰かが通りすがるのではないかと気が気でなかった圭子だが、やってきたのは自分をこんな目に遭わせた男に違いなかった。
 突然首がぐいと曳かれた。どうやら、首輪についたもう一つの輪に縄が繋がれたらしかった。おそらく犬の散歩用の縄なのだろうと思った。

 首を曳かれるまま、圭子は歩かされた。目隠しされているので、ただただ曳かれるままに従うしかなかった。しかも、下半身はパンティを膝までおろしているので、とても歩きにくい。
 「何処へ連れてゆくのです。何をしようというのですか。貴方は誰なの。」
 しかし、男からは何の返答も返ってこなかった。

 不自由な格好で、圭子が連れて行かれたのは学校内のようだった。まだ赴任間もない圭子だったが、だいたいの建物の様子は覚えていた。
 正面玄関から学校の建物に入ったらしかった。そのまま校長室、職員室がある場所を真っ直ぐ廊下を抜けて、階段を昇らされた。
 階段があることを前もって想定していなかったら、転ばないであがることは出来なかったに違いない。それでも最初の段を上るときには転びかけ、首を思いっきり曳かれて、息が止まりそうになった。しかし、男はそんなことには、何の躊躇もなかった。
 相変らず不自由な両手と膝まで下ろされたパンティのままで、3階まで登らされた。男は更に、圭子を上のほうへ引いてゆこうとする。その上は圭子も行ったことのない場所であった。学校の建物の外観からすると、名物になっている時計台の下のバルコニーに出る筈である。
 時計台は学校の顔にもなっている目立つ造りになっていて、表の通りから見上げるとよく見える。

 三角形の屋根の下に、大きなローマ数字の文字盤に飾られた大きな時計がある。その下はバルコニーになっていって、手擦りもなく危ない為、人間の背の高さくらいの金網のフェンスが張られていた筈だ。そのバルコニーに入るためのちいさな扉が時計の右下あたりにあったのを圭子は思い出していた。

 ドアの鍵が開けられる音を聞いたと思った後に、今度は突き出されるようにしてドアの外へ押し出された。外の風は冷たかった。下着を下ろした下腹にも冷たい風が過ぎる。スカートが大きく翻っているのが腿に当る風で感じられた。

 そばでガチャガチャいう音が聞える。何の音だったか気づいたのは、金網のフェンスにある扉の外へ押し出されたらしい時だった。フェンスに一箇所だけある扉の鍵が開けられ、その外側に押し出されたのだった。
 「抵抗して暴れるなよ。下へまっ逆さまに落ちることになるぜ。死にたくなかったら、おとなしく言うとおりにするんだぜ。」
 圭子は恐怖に膝が震えた。時計台のフェンスの外側は、圭子もはっきり見たことは無かったが、確か30cmほどしかない筈だった。
 「そのまま横ず去りに歩くんだ。そうだ、そのまま進め。」
 男はフェンスの内側に居るらしかった。
 「よし、そこで止まれ。」
 その場所で首がぐいと後ろに曳かれた。カチンという音がした。その途端に首の自由が効かなくなった。なにかで首輪が固定されたらしかった。それから今度は背中の両手首が曳かれた。手錠を外す音がする。圭子は逃げるチャンスかと窺ったが、首が固定されていて逃げられそうもなかった。
 「両手を大きく広げてあげるんだ。この間のプールの用具室の時みたいにな。」
 男は冷たく言い放った。
 仕方なく、圭子は従った。また、カチャリと音がした。今度は右手が固定された。
 更に上から手が伸びてきたらしく、左手の手首が掴まれたかと思うとそこへ新たな手錠が嵌められた。そしてそれが右手と同じくフェンスの金網に掛けられた。またしても、圭子は大の字に縛り付けられてしまった。今度は足首は自由だったが、太腿の途中にパンティが下ろされたままである。
 上から手が伸びてきて、目隠しが取り払われた。圭子の眼下には学校の敷地が大きく広がっていた。目の前には何もなく、3階建ての校舎の上の手擦りのない屋上になった時計台の下のフェンスの外側に磔にされている自分を確認した。
 両手が手錠で固定されているので、落ちることは無さそうだったが、恐怖感には変わりはなかった。首輪が繋がれているので、後ろを振り返って見ることもできない。
 男はすぐ後ろに立っているようだった。
 「朝になったら迎えにきてやるよ。」
 男は冷たくそう言い放つとカツカツと靴音だけたてて、バルコニーを出ていってしまった。

 暫くして、鋭い光が圭子の目を眩ませた。時計台を浮き上がらせる学校自慢のライトアップの照明が点けられたのだった。しかし、今回のそれは、時計台というよりも、その下に十字に磔にされた圭子の姿を浮き上がらせるものだった。スポットライトを浴びたその姿態は、かなり遠くからでもはっきり見える筈だった。短いスカートは更にずりあがり、その露わになった太腿にかろうじてまとわりついているパンティもくっきりと際立たせていた。時折吹く冷たい風は、ふんわりとした軽い生地のスカートを簡単に翻らせ、何も着けていない股間を見事にあらわにするのだった。

tbc


  次へ   先頭へ




ページのトップへ戻る