夜の学校

妄想小説

プール当番



 第四章 深夜の呼び出し


 その卑劣な呼び出しは、その日の夜にすぐさま始まった。不快な思い出に一日中を嫌な気分で過ごした圭子は友人の食事の誘いも断って、ひとりでアパートに戻ってきた。何気なく郵便受けに目をやった圭子に、小さな白い角封筒が目に留まった。中途半端に圭子の部屋用の郵便受けからはみ出している。はみ出した部分に「親展:写真在中」と書いてあるのが見える。

 ひったくるように取ると急いで部屋にはいり、鍵をしてから慌てて封を切る。果たして中から出てきたのは、脚を大きく広げてまくられたスカートからパンティを丸見えにさせている女の写真だった。顔の部分が手で破り取られている。が、圭子自身に間違いない。今朝撮られたものだった。裏に(これを学校に貼り出されたくなかったら、夜8時に学校の正門前の公衆電話に来ること。)と書きなぐってある。
 卑劣な悪戯だと思った。破り捨てようと思ったが、思い直し、机の奥にしまった。時計を見ると7時半になろうとしている。もうあまり時間がなかった。
 車で行けば15分ほどだ。圭子はその日の朝、戻ってから着替えたロングスカートを脱いで、今朝襲われた時に着ていたミニのワンピースに再び足を通す。手紙の最後に(今朝着ていた服で来ること。)という指定まであったのだ。ちょっと躊躇ったが、下穿きも取り替えることにした。下着も今朝替えたばかりであるが、一日外へ出ていたので念の為替えることにした。考えたくはないが、何があるか分からない。服の汚れも気になったが、構っている余裕もなかった。化粧を直し、車のキーを取り出した。

 車を学校の裏の駐車場に停め、歩いて正門に向かう。駐車場からは学校の外側をぐるりと歩いてゆくことになる。もうすっかり暗くなっている。学校のまわりは畑がつづいていて人家は殆どない。外灯もまばらにしかない。その薄暗い道を圭子は一人、小走りに正門に向かった。

 目の前の左手に正門が見えてきた。その反対側に外灯に照らされた電話ボックスが見える。時計を見るともう8時になろうとしている。
 電話ボックスに近づこうとした時、突然、その電話が鳴り出した。圭子はあたりを見回して誰も居ないのを確認してボックスの中に入った。
 受話器をそっと取る。一瞬、無言が流れる。

 「遅かったじゃないか。もう少しで遅刻だぞ。. . . 」
 男は低い声で言った。何か人工的に作った声に聞こえる。
 「遅刻したら罰を与えようと思っていたところだ。」
 「誰なの、あなたは。」
 また暫く沈黙が流れる。圭子はどうしていいのか分からない。

 「お前にはこれから言う命令にすべて服従してもらう。」
 「えっ、なんですって。」
 圭子の背中に冷や汗が流れる。どうも、こちらの姿が見えているらしい。圭子はあたりを見回すが、外灯の明かりの他は真っ暗である。学校の建物もあちらこちらに非常灯が点いているくらいで後は暗闇である。
 「パンティを膝まで下ろして貰おうか。」
 「な、何だってそんなことをしなくちゃならないの。あなたは誰。」
 「おとなしく言うことを聞かないのなら、この話は終わりだ。明日の朝を楽しみにしてるんだな。」
 圭子は焦った。どうしていいのか判断がつかなかった。
 「さっき、学校のある場所に、ある写真を貼り出した。生徒に見させるにはあまりに刺激的な写真だ。しかも、顔の部分も切り取られていない。」
 圭子にはなんだかすぐに分かった。冷や汗が流れる。
 「ど、何処なの。」
 「お前が言うことを聞けば、教えてやろう。」
 圭子は考えた。いまから学校じゅうを探し回って、写真を見つけることが出来るかどうか。しかし、その間にも別の写真を貼り出させかねない。
 「待って。待ってちょうだい。. . . まだ、. . . あまりに急なことで、. . . でも、ちょっと待ってくれない。」
 「みっつ、数える。その間にパンティをおろさなければ電話を切る。ひとつ。」
 圭子はもう一度あたりを見回す。相変わらずの暗闇で、あたりには誰の姿も見えない。
 圭子はおそるおそるスカートに手を掛けた。
 「ふたつ。」
 「待って。脱ぐわ。」
 圭子は取り合えず素直に従うことに決めた。いつ誰に見られるかも分からないと思うとあたりが気になって、さっとは脱げない。意を決してスカートの中に手を入れて、パンティを後ろからくるりと巻き取るように膝まで下ろす。自分の姿が情け無かった。

パンツ下し

 「脚を開いて手を上に上げろ。受話器は外すなよ。」
 言われたように、脚を軽く開いて受話器を肩でつかみ、両手を挙げた。手を挙げた時にそれでなくても腰ぎりぎりまでしかないミニの裾が持ち上がる。股間が覗いてしまっているかもしれなかった。が、圭子には確かめようもない。
 「どうだい、晒し物にされた気分は。そのまま誰かが来るまでその格好が続けられるかな。」
 「わたしをこんな格好にさせる為にわたしを呼んだの。どうしてほしいの。」
 「慌てることはない。お前が従順にいうことを聞くか確かめているだけだ。パンティを下ろしたままの格好で歩いてゆくんだ。体育館横の外の男子トイレの中だ。写真を取ったらすぐにここへ戻って来い。」そこでプチッという音とともに電話は切れた。

 圭子はもう一度、あたりを見回す。膝のパンティが落ちないように歩くのは至難の業だった。片手で端を抑えながら小走りにトイレに向かう。体育館脇の外のトイレまではグランドを突っ切ってゆかねばならない。外灯が幾つか点っているだけなので薄暗いが、もし誰かいれば、圭子の辱めを受けた格好は丸見えである。
 圭子は誰も居ないことを祈りながら小走りにグランドを抜ける。勿論、こんな格好を命じた男は自分の姿を楽しみながら見ているのは分かっていたが。

外便所

 そのトイレの男子用には勿論、入ったことは無かった。壁はタイル貼りだが、床はコンクリート地塗りのままである。明かりを付けることは躊躇われたが、中は真っ暗で何も見えない。カチンという音をたてて、蛍光灯のスイッチをいれ、そっと中に踏み込む。男性用のアサガオが並んでいるのを見ると、顔がほてってくる。夜中に男子トイレに忍び込む女教師として捕まったら何を思われるか分からない。しかし、圭子には躊躇している暇はなかった。真正面奥の個室の扉の真ん中にそれは鋲で留められていた。

 目隠しをされて両手を高々と広げさせられている女の写真だった。下半身はまくられて中央に白い三角形の下着が覗いている。
 (これで自分と判るだろうか。)
 圭子は自信が無かった。が、似ているとは言われるだろう。強いて自分ではないと否定すれば否定できなくもないかも知れないと思った。
 (こんなもので、脅されることはない。)
 圭子は自分に言い聞かせようとした。
 写真を引き剥がすとトイレを出ようとした。が、その時、トイレの入口のところにもう一枚写真が貼られていたことに気づいた。入るときには死角になっていて気づかなかったのだった。同じようなポーズの女に後ろから男が襲いかかっている。男の手が女の下穿きの中に突っ込まれている。肝心の顔の一部分が今度も破り取られている。が、明らかに今度は目隠しはされていない。破り取られていない写真なら、誰のものか一目瞭然だろう。

tbc


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