逆襲7

妄想小説

恥辱秘書






第九章 美紀の逆襲


 七

 美紀にはまだもう一芝居残されていた。矢作との対決だった。地下での狼藉のどこまでを美紀に知られたのかが判らない矢作ではあったが、何かしらまずい事実を美紀に握られてしまったことは察しがついていた。(暫くはおとなしく様子をみながら振舞おう)と次の日出社した矢作だった。ベルトが見つからず、現場に残してきたらしいことは判ったのだが、朝早くに出社して独り、地下書庫にこっそり忍び込んで探してみたが、何処にも見当たらない。火事が起こったらしい場所にも何の形跡も残っていないのが不思議だった。

 そして凍りついたのが、事務所に戻ってパソコンを立ち上げ、メールをチェックした時だった。美紀から「親展」とだけタイトルのあるメールが入っていた。あたりに人が居ないのを窺がいながら震える手でメールを開く。

 「あなたのしたことは、地下倉庫の防犯用カメラに収められていたわ。証拠品も落ちていたし。午後3時に、設計本館の屋上で待ってるから独りで来なさい。」とだけ記されていた。添付で画像ファイルが付いていて、開いてみると、粗いが自分が縛られた女の上に馬乗りになっているのが映っている。矢作にも、それがデジタルビデオカメラの映像から作られた静止画像であることはすぐに解った。そして、自分が地下に置き忘れたらしいベルトの行方もはっきりした。

 矢作はすぐに対抗策を思いつくほど頭の出来がいいほうではない。無策のまま、どうしようか考えもまとまらずに約束の時間を迎えてしまった。矢作は工場の敷地内のことは精通していたが、設計の建屋である設計本館の中身のことはあまりよく知らない。屋上はあるのは判っているが、立ち入り禁止で普段施錠されていることぐらいしか知らず、鍵も誰が管理しているのかさえ知らなかった。
 事前に見にゆくことも憚られた。そこは謂わば美紀の側のホームグランドで、何が待ち構えているか判らない。迂闊に動くのは却って危険に思われたのだ。
 (相手は女だ。独りなら、いざとなったら飛び掛って押さえつければ男の力には敵うまい。)それくらいの考えしかもたず、時間になって目立たないようにそっと設計本館に入る。1階から音を忍ばせて階段をずっと昇り、美紀が居る筈の5階を通り抜けて、薄暗い屋上への階段を上がる。

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