逆襲2

妄想小説

恥辱秘書






第九章 美紀の逆襲


 二

 打ちっ放しのコンクリートの床に直接膝をつけるのは痛かった。そして自由にならない両手を背中で合わせておそるおそる上体を下げ、床に肩と頬をついて不自由な土下座の格好を取る。手もつけない土下座の格好はみじめだった。
 「芳賀さん。・・・いえ、ご主人様。奴隷の分際で申し訳ありませんでした。ご主人様にお願いがあります。このままでは私はあの矢作という男にいいようにされてしまいます。どうか、お助けください。」
 美紀はその苦しい格好を暫く強いられた。それは、美紀に奴隷の身分であることを染み込ませる調教の一環でもあった。頬と膝の皮膚が擦り剥けるのではと思われるほど我慢の限界にきて、漸く美紀は頭を上げることを許された。が、跪づいた格好のままでいることを命じられた。
 芳賀は裸で戒めを受けている格好の背後にまわった。美紀からは芳賀の表情を見てとることが出来ない。
 「矢作の要求に対抗するんだったら、同じことを仕掛ければいいのさ。」
 「えっ、同じことをって・・・。どうすればよろしいのでしょうか。」
 「お前の身近な一番挑発的な女を差し出せばいいのさ。馬の前に人参をぶらさげれば飛びついて来るさ。そこをすかさず証拠の写真を撮ってしまうだけのことだ。」

 その後、美紀きが聞かされた策略は実に用意周到なものだった。芳賀が言っている、身近な一番挑発的な女というのは誰のことを指しているのか、美紀にもすぐに察しがついた。
 北条幸江という女だった。見掛けはとても若そうにしているが意外に歳は美紀にも近く、噂でしか知られていないが、ばつ一ということだった。フロア中でスカートの丈は一番短かった。美紀もスカート丈は短くセクシーなほうではあったが、美紀が男を寄せ付けない毅然としたところがあるのに対し、幸江のほうは若い男といえば誰彼なくすり寄っていって色目づかいをするようなタイプで、男好きするようだった。女性経験の少ない若い男性社員は、幸江のような女にそばをうろちょろされると、気になってしかたないといった風だった。
 フロアでそれほど数多くない女性社員仲間で、美紀とは昼食時に一緒に弁当を食べるような仲だった。そんな幸江を陥れるようなことは美紀には絶対に出来ないと思っていた。が、芳賀はそんな美紀の懸念も計算に入れていて、ちゃんと矢作を最後のところで制止する手段も考えてあったのだった。

 芳賀から策略の細かいところまで教え込まれてから、手錠を解かれて着衣を許された後も、まだ美紀はそれを実行に移したものか迷っていた。が、今の自分の身を守るには、芳賀の用意周到な計画に乗るしか道はないように次第に思えてきたのだった。

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