妄想小説
恥辱秘書
第十八章 切迫した吹き替え編集
八
「専務、拙い事になりました。」
内密な話があるとやってきた芳賀の暗く蒼褪めた顔を見た長谷部は只ならぬものを感じた。
「ま、まさか・・・。」
「怖れていたことが起きてしまったのです。この執務室の映像が流出してしまったようです。」
「な、何だって・・・。」
長谷部の顔からも血の気がすうっと引いていった。
「で、・・・、どんな・・・、どんな映像なんだ。」
芳賀は、一瞬間を置いて、顔を上げ、長谷部の覚悟を確認するかのように見つめてから、ゆっくりと吟味しながら言葉を口にした。
「私の口から申し上げるのは、憚られるのですが・・・。誤解のないように先に申し上げますが、あくまでも、これは客観的にみて、どう見えたかということでご了解頂きたいのです。・・・。せ、専務が、秘書にセクハラを強要しているようにしか見えない映像でした。」
「セクハラ・・・。セクハラって、どういう事だ。お前、観たのか。」
長谷部は撮られてしまった映像を想像しながらも、自分からは言い出すことが出来ない。
「は、極、一部だけですが。専務が秘書の子に、下着を取るように命じているように見えました。」
「そ、それだけか。」
「その男は、その先も続きがあると言っておりました。イッテしまうところまでしっかり映っているからとその男は話しておりました。」
「ああ、何と言うことか。」
長谷部はがっくりうな垂れてしまっていた。その表情を芳賀は密かに窺がいながら確認していたのだった。
芳賀はその後、練りに練ったシナリオを長谷部に言い聞かせたのだった。話を受けたのは、接待を言い付かったN社の沢村部長の知り合いとのこと。購買部長となると、いろいろな伝を持っていて、裏のルートについても明るいこと。その男はその道の男らしいということ。その男もあるルートからビデオ映像を入手して、沢村部長の知り合いではないかと思い、確認してみて、長谷部であることを知ったという事。自分はあくまでも何かを脅迫するつもりではないが、このビデオが流れていけば、所詮、そういう事態になるであろうこと。その前に、このビデオを内密に買い取って欲しいと言っている事。芳賀は、今、上手く交渉して買い取ってしまわなければ、専務に取っても、会社にとっても命取りになるということを強調した。その上で、会社内外に秘密を広げない様にする為、この交渉事は自分に一任して欲しい事、交渉の為に自分を専務特命業務担当の部長職に任命して欲しい事、急な出金に対応出来るように、領収書不要の特別施策枠のコーポレートカードを自由に使えるようにして欲しいことを、半ば要求するように長谷部に願い出たのだった。そして、その芳賀の申し出は、長谷部に取っても渡りに舟だったのだ。
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