回想6

妄想小説

恥辱秘書






第十八章 切迫した吹き替え編集


 三

 いつものようにメールで呼び出され、細かく指示を受けた。いろんな機器でごちゃごちゃした狭い部屋のひとつしかない机の前には、マイクと共に大きめのモニタ画面が据えられていた。その横にパソコンが立ち上がっていて、その画面に逐一、裕美への指示が文字で浮かび上がっていた。
 「モニタ横に付いているイアホンを耳にかけろ。・・・・机の上の台本の赤い印のところをマイクに向かって喋るんだ。」
 裕美が席に着くとモニタが自動で起動し、長谷部の執務室に入ってくる裕美のシーンから映像が始まった。台詞は画面の裕美が喋ろうとしている部分ばかりのようだった。イアホンからは音声が聞こえてきている。しかし、イアホンの裕美の声は、台詞とは殆ど別の言葉になっていたのだ。
 役者でもない裕美の台詞は、棒読みの一本調子だった。何度かやり直しをしたが、緊迫感に欠けていた。
 パソコンの指示が新たな命令を裕美に下した。
 「一旦止めて、机の脇のアイマスクを着けて待っていろ。」
 裕美は脇に目を遣ると、体育館の男子トイレで何度も着けさせられたアイマスクが置いてあった。裕美は素直に命令に従った。ほどなく後ろで放送室の扉が開けられたのが気配で感じられた。情報屋が入ってきたようだった。裕美はもう情報屋に逆らうような真似をすることは全く考えていなかった。すべて言われたとおりにしなければ、自分の将来はないのだと悟っていたのだ。
 アイマスクで視界を奪われた裕美は手首を捉えられた。
 (縛られるのだわ・・・)
 すぐにそう直感した。その思いの通りに手首に縄が巻かれ、もう片方の手も背中で交差させられ、括り上げられた。もう何度も縛られていて、抵抗することも観念していた。その時も余った縄を胸の膨らみの上下へ回されきつく締め上げられた。
 突然、アイマスクが外された。一瞬振り向こうとしたがすぐに前を向く。裕美には背後に目無し帽を被った男が見えたような気がした。男はナイフを手にしていて、後ろから裕美の首に手を回し、ナイフを喉元に突き当てたのだ。
 「や、やめて・・・。何でも言う通りにしますから。」
 縛られて自由を奪われた裕美に初めて恐怖心が湧いた。
 ナイフを持っていないほうの男の手が、パソコンの画面を指し示していた。そこには、(もう一度始めからやり直せ)という指示の文字が並んでいたのだ。

 ナイフを喉元に突きつけられての演技は、裕美に迫真の演技を無意識のうちにさせていた。画面で裕美が長谷部にフェラチオをさせられるシーンではマイクの前で、裕美は口に男の指二本を咥えさせられた。犯されるシーンでは、裕美の乳房、股間がまさぐられ、否が応でも、臨場感たっぷりの演技にならざるを得なかったのだ。裕美は知らず知らずのうちに、画面上でセクハラ行為を受ける、嘘の裕美そのものになり切ってしまっていた。

 「専務があんなことをする人だとは、思いませんでした。残念です・・・。」
 その最後の台詞を喋る時には、目の前の長谷部に本当に犯された気持ちになって自然と涙が流れ落ちていたのだった。

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