姦計e

妄想小説

恥辱秘書






第十五章 地位の逆転


 三

 接待の日は、あっと言う間に来てしまった。長谷部は朝から本社のほうへ行っていて、一日不在である。秘書室も閑散としていて、裕美独りだった。
 「情報屋」と名乗る男からの指示は、このところ何故か止んでいた。夕方近くになってから、裕美はその日着てきた外出着をチェックする。地味なグレーのスーツを選んでいた。スカート丈も膝ぎりぎりで、裕美としては長めのものだ。低いソファに座った時に裾の奥を覗かれない為である。
 服をチェックしてロッカーを閉め振り返った裕美の前に、美紀が立っていた。何時の間に秘書室に現れたのか、裕美はまったく気づいていなかった。美紀は、茶色の紙袋を手にしていた。
 「あっ、深堀さん。もう、時間かしら。」
 「貴方に言付かったものを届けに来たのよ。」
 そう言って、手にしていた紙袋を裕美の前に差し出した。思ったより軽い包みだった。
 「昨日、N社の沢村部長に呼ばれて、買い物に付き合わされてしまったわ。貴方へのプレゼントを買う為よ。男性一人じゃ、サイズとかわからないからって。今晩は貴方にそれを着てきて欲しいんですって。この前の貴方の格好がとっても気に入ったからみたいね。・・・・私、沢村さんに呼ばれて、てっきりデートのお誘いかと思ったら、貴方へのプレゼント選びの手伝いだったとは・・・。いいわね、もてる人は。」
 お世辞とも皮肉とも取れない微妙なトーンが感じられた。ちらっと袋の中身を覗きみると、何やら服が入っている風だった。
 「じゃ、それを身につけて、30分後に下のロビーのところで。」
 それだけ言うと、美紀はくるりと踵を返して、秘書室を出ていってしまう。

 美紀が去ってしまってから、裕美は紙包みから渡された服を出して広げてみる。白いワンピースだった。が、それは伸縮性の高い素材で出来た超ミニのものだった。バドワイザーのマークのプリントこそないものの、あのバドガールのコスチュームとまったく変わらないシルエットのものだ。
 そんな格好をしたくはなかった。が、贈られたものを無視したりしたら、向こうの機嫌を損ねかねないし、まして美紀からどんな激しい叱責を受けるかわからなかった。
 裕美はその頼りない服を手にして、奥の更衣室へ向かう。短くすることを強要されたミニの制服を脱いで、贈られたコスチュームを頭から被って裾を下に引っ張る。裾丈の短いミニの制服よりも圧倒的に短かった。
 裕美は急な雨があったと時の為に、薄手のレインコートを裕美は常時、ロッカーに仕舞っていた。超ミニのワンピースの上からそれを羽織って出ることにした。

 エレベータを降りてロビーに出ると、美紀が玄関前に立っていた。裕美のレインコート姿を見て、明らかに不満そうな顔を見せた。
 「ご免なさい、深堀さん。遅くなっちゃったかしら。」
 「大丈夫よ。それより貴方。アレ、身につけてきた。」
 「えっ、あれって・・・。あの服ね。」
 裕美はレインコートの襟を少しずらして、美紀に下にあのワンピースを身に着けていることを見せる。
 「違うわよ。アレ、トイレに立たなくても済むようにするアレよ。」
 「えっ、そんな・・・。」
 裕美は途端に泣きそうな顔になる。が、美紀は怖いようなきつい表情で裕美を睨みつける。
 「言うことを聞くって言ったでしょ。さっ、これをそこのトイレで着けていらっしゃい。」
 どこから用意したのか、さっとちいさなパックを裕美に差し出す。じっくり調べてみるまでもなく、裕美にはそれが何だかすぐに察しがつく。断ることはもう裕美には出来なかった。

 美紀からそのパックを受け取ると、すごすごとロビー奥の女子トイレに向かう。(時間が無いから早くして。)と強い口調で言われた裕美には、どうしようか迷っている暇はなかった。
 個室に入り、鍵を掛けるとレインコートの前をはだけさせ、ミニをたくし上げる。ストッキングをパンティごと下ろし、ハイヒールを脱いで片脚ずつ抜き取る。もう今ではすっかり手馴れた手つきで、紙おむつのパックを開くと、脚をがに股に開いて、股間にそれを当てる。両脇の腰骨のところで、テープを留めて、股下のギャザーの皺を直す。脱いだストッキングからパンティだけを剥ぎ取り、ポーチの中に丸めてしまうと、紙おむつの上からストッキングだけを穿いて、裕美はそそくさとトイレを出た。
 ロビーに戻ると、玄関先には、既に芳賀が運転する黒いリムジンの社用車が到着していた。
 以前と同じように、窓に目隠しフィルムの貼られた後部シートに美紀とともに、滑りこむ。膝があがって腿が露わになりそうになるのをレインコートで包み隠す。その裕美に美紀がすかさず囁くように声を掛ける。
 「ちゃんと付けてきたか、見せてみなさい。」
 裕美は美紀に許しを乞うように目を見上げる。が、美紀のきつい視線は有無を言わさぬものがあった。
 裕美は唇を噛んで、前の運転手の芳賀課長に気づかれないように、こっそりとレインコートの裾を少し開き膝を開ける。大きく開かなくても股間のデルタゾーンはすぐに丸見えになってしまう。
 裕美の股間をちらっと覗き込むと、美紀は鼻をならした。
 「ふん、ま、いいわ。準備は完了ね。じゃ、行きましょう。芳賀さん、車を出してください。」
 裕美は芳賀が、バックミラーで脚を開いた裕美をしっかり見ていたことにこの時気づいた。が、知らん振りをすることしか出来なかった。

 ボーイに案内された倶楽部の部屋は以前に来たところと全く同じだった。今回も既に沢村は来ていて、ブランデーグラスを傾けていた。
 羽織っていたレインコートは、倶楽部の入口を通る時に、美紀から剥ぎ取られるように脱がされ、クロークに預けられてしまう。下半身が殆ど剥き出しのバドガール風のワンピースの身体を晒すのは、倶楽部の案内のボーイに対しても恥ずかしかった。

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