妄想小説
銀行強盗
八 脱出劇
カウントダウンが進められる間に全裸になった女子行員達は閉まっている銀行正面入り口の前に並ばされていた。カウント5になったところで、屋上のヘリがエンジンを始動し、離陸体勢に入る。カウント3になったところで、銀行のシャッターを開けるボタンが押された。その直前には良子が下着姿で天井から吊られている部屋のブラインドが全開にされていた。
「あ、今、銀行二階の部屋のブラインドが全開にされました。部屋には下着姿の女性が依然として縛られたままですが、既に目明き帽の犯人たちの姿は見えません。女性は何か苦しそうに悶えているように見えますが、どうしたのでしょうか。あ、今、屋上からヘリが飛び立とうとしています。あ、そして銀行の正面のシャッターが開き始めました。」
銀行真正面のビルの屋上に居たキャスターが生放送の状況を叫びながら伝えていた。
カメラは二階の部屋の下着姿の女性、飛び上がろうとするヘリ、そして次第に上がっていく銀行正面のシャッターを夫々捉え、ディレクターがその画像を次々に切替えるよう指示する。
次の瞬間、ディレクターは言葉を失った。半分まで開かれたシャッターを潜るようにして全裸の若い女性が何人も走り出てきたのだ。しかも女性は皆後ろ手に縛られているらしく、剥き出しの乳房も股間も隠していない。
数秒、茫然となっていたディレクターだったが、事態のまずさに気づき慌ててカメラマンに向かって指示を出す。
「カメラを止めろっ。い、いや。止めるんじゃなくて、放映の方を中断しろ。何か他の画像に切替えろ。」
映していたカメラマンも職業上の習慣で、咄嗟に逃げ出てくる女性たちの表情や剥き出しの股間に焦点を合わせていたが、一瞬後それがまずい事に気づいてカメラの視線を慌ててずらす。しかし時既に遅しで、リアルタイムの映像は電波に乗って全国に流れてしまっていた。
報道陣が突然の事態に慌てているその瞬間の直後、けたたましい爆音と共に銀行の二階が爆破された。良子が拘束されていた隣の部屋らしかった。銀行のシャッターからは第二陣で男性銀行員等と人質にされていたらしき人達が一斉に走り出てきた。その次の瞬間、今度は銀行の 一階奥付近から爆音が鳴った。
その時にはSITとSATの部隊が漸く到着し、現場指揮を任された刑事部長の突入指示を待って居た所だった。しかし全くの予測のつかない事態に現場指揮の刑事部長も言葉を失っていた。気づいた時には、逃げ惑う野次馬の群集の中に、全裸で両手を後ろ手に拘束された女性たちが逃げ惑い、その姿を動画で撮影しようとする野次馬の輩まで居て、全く収拾がつかない修羅場と化しているのだった。思いも掛けない相続く爆発のせいで、刑事部長もSITやSAT部隊に突入指示のタイミングを完全に逸してしまっていたのだった。
第一部 完
引き続き第二部を構想中ですがアップは暫く後になりそうです
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