妄想小説
銀行強盗
六 脱出準備
「さて、人質諸君。外でも放送局の報道が始まったようだ。そろそろ警察当局ももうじき到着するだろう。そうなれば、この銀行強盗事件も最終フィナーレを迎えることになる。君たちにもその為の準備をして貰うタイミングがやって来たと言う訳だ。」
リーダーが床に蹲る人質集団に告げた時にざわざわと人質たちの不安さを象徴するようなざわめきが起こった。
「基本的に我々の言うことをちゃんと聞いていれば、命を奪うようなことはしない。ちゃんと解放する。ただし、その為には条件がある。特に君たち、四葉銀行を代表する美しくも若き窓口嬢たちだ。君たちには銀行を背負って立つ役目がある。だから、それを言葉通りに実行して貰う。」
女性行員たちは何を言われたのかと意味が分からず互いに目配せをし合う。
「この銀行はもうすぐ爆破することになる。その前に君たちを解放する。その為の条件とは全裸になって貰うことだ。君たち四葉銀行を代表する美しくも若き女性銀行員はその美しい裸体を晒して逃げて貰う。それが嫌な人はここに残って爆死という最後を選んでも構わない。さあ、どうする?」
女子銀行員たちのざわめきが更に大きくなる。皆、一応に動揺していた。そのうち、一人がすくっと立上った。中堅のそれほど美人とは言いがたい女性銀行員だった。
「私、脱ぎます。」
そういうと、潔く上着のブレザーを脱ぎ捨て、ブラウスもボタンを外し始めた。すぐにそれに倣う者が出始めた。スカートを脱ぎ落し、下着だけになってさすがに躊躇っていたが、助かりたいとの思いに最後はブラジャー、そしてショーツを脱ぎ捨てた。どんどん全裸の女子行員たちが増えていく。しかし、中にはどうしても踏み切れない女子行員も居た。若手のそれも行員たちの中でも特に美女との噂の高い第一線の窓口嬢たちだった。
「全裸になって助かるか、服を脱がずにこのままここで爆死するかはもちろん貴女たちの自由意思で決めていい。服を脱ぐ決心をしたのはこれだけか。もういいんだな。」
全裸になった者、服を脱げずに蹲るもの、それぞれを見渡したうえでリーダーは次の事を高らかに告げる。
「次に、男性行員たちに生き残る条件を告げる。この全裸にならずにここに残るという美しき女性行員たちを強姦出来たものは生きたまま解放する権利を与える。さあ、この権利を受けたいという男性行員はいるか。誰を強姦するかは、早い者順で選ばせてやる。」
この発言に今度は男性行員たちがざわめき立つ。早速手を挙げた行員がいた。
「お、俺がやります。相手は・・・、相手は桐谷美玲さんです。」
「何っ? そんなら俺もやります。相手は佐々木希さんです。」
次々に男たちが手を挙げて名乗り上げる。強姦相手として指名された女性たちもパニックになった。
「お、おい。儂も立候補出来るのかな。」
そう後ろから名乗り上げたのは何と支店長だった。まだ両手を自分のネクタイで縛られ、ズボンのチャックからは萎えた陰茎をはみ出させたままの格好だった。
「何てことを言うのかしら。支店長なのに、自分の行員を強姦しようと名乗り出るなんて。恥知らずもいいとこだわ。」
既に全裸になっていた女子行員が支店長の非業の行為を思わず詰る。
「いや、お前は駄目だな。さっき女警官に三度フェラチオされたぐらいで、もう勃起出来なくなっているぐらいだからな。お前はもう役立たずってとこだな。」
「い、いや。違うんだ。同じ女に三度もやらされたって、飽きてきて立たなくなっただけなんだ。違う新しい女なら、新鮮な気持ちで欲情出来るんだ。」
「何を勝手な事を言ってるんだ。お前、支店長なんだろ。恥ずかしくないのか?」
「儂にだって、生きて解放される権利はある筈だ。」
「いいから、お前は隅のほうにすっこんでろっ。」
そう言って目明き帽の男の一人が支店長の股間の剥き出しのペニス目掛けて蹴り上げる。支店長はもんどりうって、床に転がり女性行員たちの間に倒れ込むが誰も助けようとはしない。
「ま、待って。犯されるぐらいなら全裸になります。」
そう言ったのは真っ先に強姦相手として指名された桐谷美玲だった。それに佐々木希も続く。
「私も全裸になります。」
「私も・・・。」
結局女子行員全員が全裸になることに同意した。
「ようし。そしたら脱いだ服をこっちに寄こせ。そして壁に向かって全員並べ。そして両手を背中に出して組むんだ。」
服をすべて奪われ、最早後戻りは出来なくなっていた。脱いだ服からストッキングだけが選び取られる。犯人グループたちによって、女性行員たちは自ら脱いだストッキングで後ろ手に縛られていく。それは解放される際に全裸のまま、乳房も股間も隠すことが赦されないことを意味していた。
そんな頃、二階の応接室ではリーダーと良子が二人で対峙していた。
「どうするつもり。さっきパトカーのサイレンが聞こえていたから警察も到着したみたいよ。もう逃げられないわよ。」
「そんな心配より、自分の事を心配するんだな。お前には最後にもうひとつやって貰うことがあるんでな。」
「な、何っ。この期に及んで何をさせようって言うの。」
「ま、簡単に言えば警察と報道を騙す為のカムフラージュってやつだ。その前に、もうひとつのカムフラージュを仕掛けとかなくちゃな。ちょっと待ってろ。」
そう言うと、リーダーは手にしていた携帯で電話を掛け始める。
「ヘリは待機しているか? よし。パイロット独りだけにしてあるな。そしたらそのヘリを銀行の屋上に着陸させるんだ。そしてそのままそこで待っていろ。」
そう言うと携帯をすぐに切る。
「ヘリで逃走するつもりなのね。そんな事したって、逃げ切れる訳ないわ。警察だってヘリを出動させている筈だわ。」
「間抜けな警察はまだヘリの準備は出来てないみたいだぜ。もっとも放送局の予備のヘリはもう来てるみたいだがな。」
今度は他の仲間に向かって携帯で連絡しているようだった。
「もうじき放送局のヘリが一台、この銀行の屋上に着陸する。そしたらプランBのシナリオ通り緞帳を被ってヘリに近づいてヘリの周りを蔽って何が起こっているか見えなくするんだ。いいな。シナリオ通り上手くやれよ。」
そう言って携帯を切る。
「貴方の目的は何なの。やってる事をみていると、お金が目的とは思えないわ。銀行から現金を強奪したって、たいした金額を持出せるとは思えないわ。ヘリに積むにしたって・・・。そうだわ。だいたい放送局のヘリぐらいじゃ貴方たち全員が乗れるとは思えないわ。どうするつもり。は、そうだわ。そうなのね。あの屋上に用意させているのは目を逸らさせる為のダミーなのね。」
「さすがにお前は馬鹿じゃないようだな。」
「貴方の目的は何? この作戦を考えたのは貴方なのでしょ。」
「俺の指示に従って行動している他の奴等は皆、金が目的だ。数百万も貰えれば何でもする連中さ。確かに俺は金が目的じゃない。こんな銀行強盗ごっこで持出せるようなはした金には興味はない。ま、強いていえば、お前と違ってオツムの弱い警察組織の連中の鼻を明かしてやる事かな。」
「そんな事して何の意味があるって言うの。」
「まあ、それはおいおいお前自身も思い知るようになるだろうさ。」
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