ヘリ

妄想小説

銀行強盗




 七 カムフラージュ

 銀行の屋上に降りて行く一台のヘリを更に上空から監視していたもう一台のヘリコプターの運転手は放送局へ向けて無線の連絡をいれる。
 「今、屋上へ向かって降りていきます。あ、今、着地しました。目抜き帽を被った男たちが何やら黒い大きな布を引き摺ってヘリに近づいています。あ、ヘリの周りが黒い布で多い被されました。その下で何をやっているのかは確認出来ません。」

 その頃、現場に漸く到着した刑事部長の徳井が率いる精鋭部隊が辺りに居る野次馬のあまりの多さに愕然としていた。MBC放送局の報道番組が始まるや、四葉銀行上窪駅前支店の周辺にはどんどん野次馬が増えてきていたのだ。警察が到着した際には、その数は野次馬のほうが警察官の十倍を軽く超えていたのだ。
 「なんで、こんな大勢の野次馬が居るんだ。これじゃ、道路を封鎖しようにも人数が全然足りない。至急、近隣の所轄に応援を要請してくれっ。」
 そう叫んだ徳井刑事部長だったが、明らかに後手に回っていて最早何をしようにも手遅れなのは間違いなかった。

 屋上に到着したヘリの元へは自動小銃で武装した男達が緞帳を掲げて近づいてきていた。あっと言う間にヘリの周囲は緞帳で覆われてしまう。
 「お前がパイロットだな。独りかどうか確認させて貰う。ようし。それじゃあ、無線機で向こうへ連絡するんだ。出発準備が完了したとな。」
 「わ、わかりました。」
 そう言うと、パイロットは無線機のマイクを取り上げる。
 「こちら一号機。出発の準備が整いました。」
 そこまで言ったところで自動小銃を持っていた男の一人が無線機のマイクを取り上げた。
 「こっちからの送信はこれで終わりだ。お前はこのままこのヘリを操縦して群馬県まで行くんだ。送信は出来ない状態だから飛行場などへの着陸は出来ない。何処か安全な学校のグランドか何かへ緊急着陸をしてそこで連絡を待て。ここにあるジュラルミンケースの中身は爆弾だ。言う通りに操縦していかなければこのヘリごと爆破する。わかったな。」
 そう言うと、パイロットから奪った無線機のマイクの電線を手にしていたペンチでブチッと切ってしまい、マイクは屋上の隅に向かって投げ捨ててししまう。

 「こちら屋上。ヘリの準備が整いました。」
 「オッケー。了解。こっちも最後の準備に取り掛かる。指示を出したらすぐにヘリを飛び立たせろ。」
 「わかりました。」
 良子の目の前のリーダーは屋上の仲間に適確に指示を出していた。
 「さて、準備がほぼ全部整ったようだ。最後にお前に最後の役目の準備をしよう。」
 「な、何をしようと言うの・・・?」
 「これと・・・、それからこれだ。」
 そう言ってリーダーが差しだしたのは一本のペットボトルと、ある容器だった。ペットボトルには吸い口から一本の管が延びていた。それの先を良子の口の中に含ませると吐き出せないようにガムテープで良子の口の周りを念入りに貼り付けてしまう。もうひとつ、良子が目にしたものはその特殊な形状から見紛うことのないもの、浣腸用の容器なのだった。
 リーダーは良子の口をガムテープで被ってしまうとペットボトルを良子の頭上に翳す。中の液体が口の中に溢れてきて、否が応でも呑み込まざるを得ない。
 「むむむ、むむむむ・・・。」
 必死で抵抗しようとするが、どうにもならない。呑み込まないように口の中に溜め込もうとすると男が良子の鼻を摘んで息を出来なくしてしまう。苦しくなって呑み込まざるを得なくなってしまうのだった。ペットボトルが空になると漸く口の周りのガムテープが剥された。
 いきなり呑まされたペットボトルいっぱいの液体に息絶え絶えに呼吸をしていると、今度は男が良子の背後に廻りショーツをいきなり膝上まで降ろしてしまう。無防備な尻に浣腸器の切っ先が差しこまれたのだった。
 「や、やめて・・・。そんな事っ。」
 良子の必死の懇願も空しく、冷たい液体が良子の腸内に注ぎ込まれていくのだった。
 ペットボトルの中身は良子の想像通り、大量の利尿剤を融かし込まれた生理食塩水だったようだ。そして浣腸液もほぼ同時にその効力を発揮し始めていた。
 「おっと。お前にヘリがダミーだって事を感づかれてしまったからな。お前にはこれから放送局への晒し者になって貰うんでね。口パクでヘリの事ばらされても困るんで、お前の口はもう一度塞がせて貰うぜ。」
 そう言うと、さっき剥したばかりのガムテープを再び良子の口に貼り付けてしまう。
 「こっちも準備完了だ。それじゃ、カウントダウンを始めるぞ。いいか。10、9、8、7。」

良子

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