妄想小説
銀行強盗
五 警察出動
「編成局長。大変です。どうやら銀行強盗は本物のようです。さっき、犯人たちが外の様子を覗こうとブラインドを少し開いたんですが、中に下着姿の女性が縛られていて犯人たちに銃を向けられているのが見えました。映像も録れています。ほんの一瞬ですが。今、画像をそっちに送ります。またブラインドが少し閉められて、表情とかは見えませんが、人の動きはかろうじて見えます。人質になった女性は依然として部屋の真ん中に吊られたままのようです。」
「そうか、わかった。これは一大スクープになる可能性が出てきたな。援軍を送るからきっちりいい映像を撮れよ。」
「わかりました。編成局長。」
一階ではさきほど放送局に電話を掛けさせられた女性行員が再びメモを渡され携帯を手渡されていた。
「もしもし、こちらは四葉銀行の上窪駅前支店の者です。責任者の方に急いで伝えてください。ヘリコプターを一台、乗っているのはパイロット独りだけにして銀行の屋上へ着陸させてください。後は到着してから指示しますとの事です。従っていただけないと、人質が一人ずつ殺されると言っています。どうか、私達を助けて・・・。」
そこまで喋ったところで携帯はブチッと切られた。
「どうします、編成局長。」
「どうするもこうするもないだろう。人命救助が第一優先だ。犯人の指示どおりヘリをパイロット独りにして銀行の屋上へ向かわせろ。ただし、もう一台のヘリをビルから見えない場所にホバリングで待機させておくんだぞ。」
「警察に連絡しなくていいでしょうか。」
「ううむ。そうだな。午後の報道の時間がもうすぐだろ。報道の一番で現場画像からいれるんだ。そしたら連絡しなくても警察にも事態が判るだろっ。」
「は、わかりました。すぐに手配します。」
「大変です、署長。水島巡査部長の居場所がわかりました。四葉銀行、上窪駅前支店です。犯人が水島巡査部長を含め数人を人質に取って銀行に立て籠もっている様子です。」
「どっからの情報だ。」
「今、テレビでやってます。MBC放送局の報道アフターファイブです。さっき映像が流れて、ちらっと人質の顔が映りましたが、捕えられているのは水島巡査部長に間違いありませんでした。」
「何て事だ。すぐにパトカーを現場に急行させろ。指揮は刑事部長の徳井君に取らせろ。それからSIT部隊とSAT部隊も至急手配しろっ。」
上窪署内もようやく部隊が動き始めたのだった。
リーダーと呼ばれる男が自動小銃を肩から下げたまま、人質の女性行員たちのもとへやって来る。女性行員たちは床の上に体育座りをさせられている。両手を挙げたままの姿勢を強要されているので、乱れてしまいがちになるスカートの裾を直すことも許されていない。中には完全に下着を丸見えにしている者も居た。それでも先程まで見せつけられていた女警官の凌辱に比べれば、自分達はよっぽどましなのだと思っていた。
「お前たちの中でコンピュータに一番詳しい奴は誰だ?」
リーダーが問いかけると皆がお互いを見回し始め、一番多くの視線を集めたのは奥にいた黒縁眼鏡の女だった。
「お前か。ちょっと立て。」
黒縁眼鏡の女は不服そうにゆっくりと立上る。両手は挙げたままだ。リーダーは女に近づいていってブラウスの胸元を掴み、いきなり力を篭めて引き千切る。
「あっ、嫌。」
ボタンが幾つか飛んで、胸元のブラジャーが露わになる。
「さっきの女警官を見ただろ。あんな目に遭いたくなかったらおとなしく言うことを聞くんだ。判ったか?」
「わ、わかり・・・ました。」
黒縁眼鏡の女は恐怖にぶるぶる震えている。
「監視カメラの映像を管理しているところへ案内しろ。」
「こ、こっちです。」
女は奥の部屋へと男を案内する。
その小部屋は情報管理を一手に行う部屋らしく、コンピュータが何台も並び、その奥には大型モニタも完備されていた。
「さっきまでの女警官と支店長のプレイの映像を出してみろ。」
黒縁眼鏡の女は監視カメラの映像の扱いにも慣れているらしく、端末の一台を使ってカメラを切り替えていき、時間を早戻していく。やがて支店長がロビーチェアに上向きになって女警官がその上に跨っているシーンが逆再生で映り始めた。
「よし、そこで再生してみろ。」
映像は支店長がクライマックスを迎える直前で、やがて大きな声を挙げて屹立したペニスから白濁したものを宙に飛ばす様がはっきりと見てとれた。
「なかなかよく写ってるじゃないか。この映像は何処に溜め込んでいるんだ。」
「この銀行専用の大型サーバーです。必要に応じてディスクに焼き込むことが出来ますが、何もなければ一週間後に自動で上書きされていきます。」
「空ディスクは今、ここにあるのか?」
「常時、完備してあります。」
「よし、そしたら今日一日の分、全てのカメラの映像をディスクにコピーするんだ。どれくらいで出来る?」
「5分もあれば充分です。」
「よし、すぐやれっ。」
約5分後には黒縁眼鏡の女は10枚ほどのブルーレイディスクをリーダーと呼ばれた男に手渡していた。
「今日の分の画像を全て消去するんだ。」
「わかりました。」
女は抵抗するのは無駄なことだと悟ったようで、てきぱきと言われた指示どおりに作業をする。
「そしたら本社のメインコンピュータに接続するんだ。」
「何の為に・・・ですか。・・・。わかりました。」
画面にはパスワードを求めるメッセージが出る。女は扱いなれているらしく、暗記している10桁のパスワードをすらすらと打ち込む。すると、画面が切り替わって様々なメニューが並んでいる情報管理のトップ頁らしきものが現れた。
「これをUSBスロットに挿すんだ。」
男は女に小さなUSBメモリらしきものを手渡す。
「これは・・・? ま、まさか・・・。」
「さすがに察しがいいな。お前の想像通りのものだ。早くやれっ。」
女はおそるおそる渡されたUSBメモリをスロットに挿しこむ。すると自動起動するらしく画面が変って横棒のグラフとパーセンテージを示す数字が現れ、何かがインストールされていくのが判る。女は自分がした事に気づいてうろたえるが、言うとおりにしない訳にはゆかなかったのだと自分を宥める。グラフが100%になったところで画面中央に(COMPLETE !)という文字が出たか思ったら、突然、画面が真っ暗になり赤い縁取りの骸骨の映像が現れる。
「よし、作業は終りだ。元の仲間のところへ戻れ。」
女は再び両手を挙げて立上るとロビーの仲間のところへ戻ってゆき、床にしゃがみこむのだった。
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