アカシア夫人

　第七部　罠と逆襲

　第七十三章

　その夜、貴子は屋根裏部屋に連れ出されて、人の字の格好で二本の柱に足首を繋がれて立たされていた。勿論、両手は背中で縛り上げられていて自由は利かない。そればかりか胸の上下に回された縄に引っ張り挙げられるように繋がれているので、後ろ手でも尻を庇うことも出来ない。元々、股下ぎりぎりまでの丈しかないベビードールのネグリジェは、胸に回された縄のところでたくし上げられていて、股間も尻も全部丸出しの格好なのだった。
　寝室に和樹がいつものように忍び込んできた時から、貴子は嫌な予感を感じていた。今では夜の営みの際に、和樹が縄で貴子を縛るのは極普通の当たり前のことのようになっていた。縛られた後、和樹から目隠しのアイマスクを掛けられた時に、貴子はただ縛られるだけでは済まないことを感じ取ったのだった。

　パシーン。
　いきなり裸の尻がベルトのようなもので打ちつけられた。
　「ひぃーっ。や、やめてっ・・・。ど、どうして、こんなことを・・・。」
　パシーン。
　答えの代わりに、もう一方の尻たぶに向けて、二発目の鞭が当てられた。
　「ど、どうして・・・。」
　「自分の胸によおく聞いてみるんだな。」
　和樹は定規のような何か固いもので貴子の顎を上向かせながら、言い放った。
　「わ、わたし・・・。」
　「お前、何か隠してるだろっ。」
　「わ、私がっ？何の事・・・？」
　「しらばっくれても駄目だぜ。お前。今日、喫茶店であの男の事、変な目で見てたよな。」
　「あ、あの男って。バードウォッチャーって名乗ってるあの人の事？」
　「そうさ。あいつの視線、避けてたよな。それにしちゃ、ずっと目で追ってたし。」
　「そ、そんな・・・。だって、前に私が雨に降り込められて、車に乗せて貰った時に、貴方に怒られて、鞭で打たれたから・・・。」
　「鞭で打たれたのは、お前が嘘を吐いて隠そうとしたからだ。」
　「ああ、そうです。でも、それは、貴方に変な心配を掛けたくなかったからで・・・。」
　「じゃ、今度も何か心配を掛けたくない秘密があるんだろう。さ、言うんだ。」
　パシーン。
　「ひいっ・・・。」
　三発目の鞭が貴子の尻で炸裂したのだった。
　「か、隠してることなんて、あ、ありません。た、ただ・・・。」
　「ただ、何なんだ。」
　「ただ、私・・・。怖いんです。何だかあの人に狙われているみたいで・・・。盗撮でもされてるんじゃないかって・・・。」
　「何か、そういう証拠でもあるのか。」
　「そ、それは・・・。証拠みたいのは、何もないんですけれど・・・。でも、時々この山荘の廻りをうろついていることがあって。それもあの大きな望遠レンズの付いたカメラを持ってて。」
　「それで、撮られたっていうのか。」
　「それは判らないけれど、そういう事があるんじゃないかって、心配で。」
　「ふうむ。あの男なら、やりかねないかもな。」
　「だから、あの人を見かけると怖くなるんです。今日も、あの人を喫茶店で見かけて、また私を付け狙っているんじゃないかって気がしだして・・・。」
　咄嗟に吐いた嘘だったが、全くの絵空事でもなかった。むしろ、事態はもっと深刻なのだった。おそらく何処かで写真を撮られたのは間違いなく、何故だか判らないが裸の写真をポスターのようにして自分の秘密の部屋に貼っているのだ。しかし、そこまで夫の和樹に言う訳にはいかなかった。そんな事をしたら、自分が悪い訳でもないのに、逆上して何処まで折檻されるか判ったものではなかった。
　「確かにあの男、盗撮でもしかねないようないかがわしい感じがあるからな。」
　貴子は和樹が自分の作った話をだんだん信用しだしている手応えを感じていた。
　「まさか、もう本当に盗撮されて、脅されてたりしないだろうな。」
　「そ、そんな・・・。もしそんな事があったら、あの人が来そうな場所へわざわざ連れていって貰ったりしません。」
　貴子はきっぱり言い切った。
　「それもそうだな・・・。ううむ。本当に、それだけなんだな。」
　「信じて。本当にただ、怖いだけなんです。」
　「そうか・・・。ようし。」
　突然、和樹の指が剥き出しにされている貴子の無毛の股間をなぞる。ぴちゃっと卑猥な音がするのを貴子も聞き逃さなかった。
　「ほしいのか。」
　「・・・。ほ、しい・・です。」
　出来ることなら拒みたかった。しかし、裸にされて縛られている状態で、そんな事を言える筈もなかった。
　「じゃ、してやるから口で咥えて硬くするんだ。」
　アイマスクで視界を奪われたまま、貴子は髪の毛を乱暴に掴まれて無理やり跪かされる。貴子の頬に屹立した肉棒が触れる。もうフェラチオは必要ないほど硬く勃起しているのが分かったが、貴子は逆らわずに、口に含んだ。
　和樹のモノは貴子の喉奥に突き刺さるように差し込まれてくる。吐き出したくなる嘔吐感に必死で堪えるしかなかった。
　「よし。じゃ、今度は尻をだせ。」
　和樹は貴子の髪を掴んだまま、床に頭を押し付けさせる。土下座のような格好になりながら、貴子は無防備な尻を晒す。その後ろに和樹が廻りこんできた。熱い肉棒が闖入してきたのはその直後だった。
　「ああ、貴方っ・・・。」



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