ビール呑ませ

ナイトバーでの痴態




  六


 男は圭子に近寄ってきて、顎をしゃくる。手にはビールの大ジョッキを手にしている。
 「だいぶ運動して喉が渇いただろう。」
 そう言うと、圭子の返事も聞かないで圭子の口にビールを注ぎ始める。圭子は慌てて口を開いて受け止めるが、男は圭子が飲みきれないようにわざとどんどん注ぎ込む。
 「ま、待って。う、うっぷ」
 圭子が制するのも聞かずどんどん男が注いでくるので、口から溢れたビールは圭子の顎から首筋を伝って圭子のスーツの胸元に流れ込んでいく。
 圭子が諦めて口をつむぐと、男はそれならとばかりに、直接圭子の胸元にビールを注ぎこんでゆく。ビールがどんどん圭子の身体の中を滲みながら流れていくのをどうしようもなかった。それはブラウス、ブラジャーを伝って、腹の周りに溜まり、そこからじわじわスカート、パンティに滲みてくる。膝を開いた格好でしゃがまされているので、最後は滲みこみ切れない滴りがパンティの股間に集中し、ついにはそこからポタポタお漏らしをしたように滴りだしてきた。
 ただ、単にビールを頭から掛けられるほうがまだマシだった。これ以上は考えられないというビールの浴びせられ方だった。圭子は口惜しさと恥ずかしさに唇を噛む。客の中には、圭子の股間の真ん中からビールが滴り落ちる様をもっとよく見ようと、身を乗り出してきている者さえ居る。

 ストッキングもパンティもぐっしょり濡れてしまうと、すこし透けてきて、パンティの横に黒い陰毛が覗けてきてしまっていた。男は更にあたらしいジョッキを圭子の口元に傾けてきた。
 何とか受け止めようと精一杯口を開けて呑もうとするが、所詮無理だった。圭子はしたたかに身体中を濡れさせられながらも、気が付かないうちに相当の量を飲んでしまっていた。その時には男の狙いが圭子の身体中を濡らすことだけではなかったのには気づかなかったのだ。
 2杯目のビールを身体と呑めるだけ口で受け止め終えた時、カウンターの奥ではいつの間にか持ってきてセットされていた扇風機が圭子に向かって風を送り始めていた。びっしょり濡れた体に風を受けて圭子はぶるっと身体を震わせた。
 「何をするの。寒いわ、やめて。」
 しかし、明らかにそれは圭子の身体を冷やすことが目的で、そのことにやってくる筈のパニックを促すものであった。



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