圭子

ナイトバーでの痴態




 一

 その夜、圭子はあるバーに呼びつけられていた。服装は教師らしい格好と指示されていた。「教師らしい格好」とは何を指すのか、ちょっと思案したが、フォーマルにちかいタイトな白っぽいスーツにした。スカート丈は、短すぎることはないが、膝上までのミニの部類には入るものだ。
 シルキーなブラウスにして、胸元を上品なタイで結んだ。

 そのバーは地下にあった。急な螺旋階段は、洞窟の牢獄へ繋がっているかのように圭子には感じられた。

 店内は暗かった。すぐにウェイターらしき案内人がやってきて、男に言われたとおり「圭子です。」というと、ウェイターはすぐにうなずいて、付いてくるよう目で合図した。
 男は一番奥のバーのカウンタのスツールに座っていた。その場所はバーテンダーがカウンターの向こうでカクテルなどを作る色取り取りの壜が並ぶ場所だった。シェイカーを振るバーテンダーが店の見世物になっているのか、テーブル席の客席から一段高い場所になっていて、そのカウンター前に数席しかないスツールの席は、店のなかでも一際目立つ場所だ。

 男は顎で、横のスツールに座るように合図する。
 スツールは腰掛けると足が床に届かないほど高い。途中に鉄製のリングがあって、そこに足を乗せるようになっている。圭子はスカートが短いので、腿の上にバッグを載せるようにして、脚を開かないように気をつけながら、腰を滑らせるようにスツールに腰掛ける。



  次へ 先頭へ戻る


ページのトップへ戻る