counterstand

ナイトバーでの痴態




  四

 スツールに座っている時はまだ暗がりだったのだが、カウンターの上は、背景の棚に並ぶ色取り取りの酒壜やグラスなどを映えさせるように当てられているスポットライトにもろに身体を晒してしまうことになってしまう。当然、テーブル席の他の客たちは何事が起こったのかと唖然としながらも圭子の姿態を見上げている。



 圭子は身体もすらっとしていて、普段から街中でも一目を惹く体つきをしているが、それがタイトなミニのスーツですらりと伸びた脚を惜しげもなく晒すような格好で、カウンターの上にスポットライトを当てられて立っているのである。その場に居た客全員の注目を集めない訳がなかった。スカートの裾の位置がすでに見上げる高さである。膝上の腿の付け根がいまにも見えそうで、少ししゃがんだりしたら見えてしまうかもしれないと誰にもそう思わせ、つい目が釘付けになってしまう。

 圭子はまわりじゅうの客に見つめられて、どういう顔をしていいか分からなかった。助けを乞うことは殆ど無駄であるとは分かっていた。客をただ無視して毅然としているしかないと思った。

 「こんな真似をさせたかった訳なのね。私を晒し物にしたかったのね。どう、もう満足。」
 「ふふふ、甘いな。ショーはこれからだ。」
 「えっ、ショーって。これから何をさせようというの。」
 「ふふふ、まあ、カウンターストリップってとこかな。」
 男がフロア端のウェイターに合図した。男がフロアから姿を消す。暫くすると何やら淫靡な雰囲気の音楽がどこからともなく流れてきた。男とあのウェイターはおそらく最初から示し合わせていたのだろうと圭子は思った。

 スポットライトが又ひとつ新たに点けられた。圭子のスリムなボディが暗闇の中に一掃鮮やかに浮き上がる。音楽と照明に客の殆どは、この店の新しいアトラクションショーだと思って観始めている。これで圭子が腰を振り出しさえすれば、もうそれはストリップショーだといっても誰も疑わないだろう。衣装は地味ではあるが、スカート丈とピンヒールのパンプスは、ショーガールのように充分その魅力的な脚線を強調しているし、ある意味では素人女教師風コスプレと見れなくもなかった。

 圭子はだからと言って、そこで腰を振って踊ってみせるつもりもなかった。が、かと言って、突っ立っている以外、男のテグスによる操りでしか身動きすることすら出来ないのである。
 その時、圭子の両膝に括りつけられたテグスがぴんと引かれた。元々不安定なカウンターの上に立たされていたので、脚は少し開き気味になっていたのだが、そのテグスが引かれて張られてしまうともう脚も閉じることすら出来ない。
 そして、後から首に掛けられた新たな輪付きの糸がその意味を示しだした。
 圭子がそのテグスによって下のほうに引かれ出したのだ。天井から吊りさげていたテグスのほうは、もう一方が引かれるに従って徐々に緩められてゆく。下に引っ張るテグスは圭子の背中を通って股下を潜り、圭子の座っていたスツールの脚に掛けられて男の手許に引かれている。その為、首を絞められないためには、今度は圭子は徐々にカウンターの上でしゃがんで行かねばならない。そして天井から圭子の頸を吊っているテグスのほうも徐々に緩められているとはいえ、適度に張られている為に、下にもう一本で引かれているからといって、椅子を伝って床に下りてしまうことも出来ない。全ては男の手加減のままに、ゆっくり腰を屈めてゆくしかないのだ。
 しかも悪いことに左右から膝を張っているテグスは、圭子が腰をかがめてゆくときに、脚を閉じることを許してくれないのだ。圭子は外側に脚を少し広げさせられたまま、徐々に腰を落として行かねばならない。
 それは見ている者、勿論男たちにとってであるが、超刺激的な眺めであった。それでなくてもスカートに隠されたみごとな脚線美の付け根の奥を覗いてみたいと思っているのに、女は手を後ろに回したまま、これ見よがしに脚を広げたまましゃがもうとしているのだ。
 スカートの奥がどんどん覗いてくる。
 「いや、駄目。もう許して。これ以上引かれると、見えてしまう。」



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