出向6

妄想小説

恥辱秘書






第十九章 奈落の出向先


 六

 「さあ、これで全部よ。」
 裕美が待っていた来客用の接客室に、美紀が段ボールに入れた裕美の私物を持ってきたのだった。秘書室のロッカーへ自分で取りにいくことは、美紀から止められていた。もし長谷部に出遭えば逆鱗に触れるかもしれないと脅されていたのだ。
 「今度行く会社の面接試験を受けたんですって?」
 美紀が無邪気に訊いてきたが、裕美には思い出したくない記憶だった。
 「とってもいい成績で、相手先から物凄く好評だったって芳賀部長が教えてくれたんだけど、一体どんな試験を受けたの?」
 美紀の質問は知ったうえでの意地悪だった。裕美が答えにくそうにしていることが、美紀の溜飲を下げさせていたのだった。あの日、裕美が正気に返った時には、誰にも言えないようなあられもない格好で床に寝そべっていたのだった。下着を着けていない上に、スカートは完全に捲れ上がって股間の恥毛を丸出しにして寝ていたのだ。起き上がってもまだふらふらしていた。床に落ちていた濡れて、じとっとして気持ちの悪いショーツを穿いて帰らなければならなかった。裕美がアパートに帰り着いてから芳賀から電話を貰ったのだった。テストの結果はとてもよく、裕美が捨て身になって献身的にサービスをするところがとても高く評価されたと聞かされたのだった。それはちっとも嬉しいことではなかったが、会社の契約がうまくいきそうだというのが唯ひとつの慰めだった。それで、いよいよ出向という身分でキャバクラで働くことになったのだった。
 「今度の会社の仕事って、役員秘書の経歴が物凄く生かせる職場なんですってね。良かったわね、裕ちゃん。」
 最近は裕美と呼び捨てにしていたのを、何故か親しげに裕ちゃんなどと呼び掛けた美紀である。この日を最後に裕美はもう会社には戻れない筈だった。送り込まれるキャバクラでの仕打ちに耐え兼ねて、裕美が自主退社するまでどれだけ持つか楽しみでもあった。そんな美紀の内心に気づきもしない裕美は、最後まで面倒を見てくれた美紀に別れを告げるのに、感謝の意を表すことしか出来なかった。
 「それじゃ、長谷部専務のこと、宜しくお願いします。」
 最後まで自分の上司は長谷部であることをはっきりさせたかった裕美だったが、美紀の言葉がぴしゃりとそれを否定した。
 「あら、私の上司だったら、何の心配も要らないことよ。今でもちゃんと私がお守りしているんだから。守っていかなければならないのはアンタの今後の身の上じゃないの。」
 最後の一言にはつい美紀の本音が出てしまっていたのだが、それさえも気づかない裕美なのだった。

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