アカシア夫人
第八部 周到なる追尾
第八十一章
部屋に入るなり、俊介は貴子の唇を奪う。貴子も素直にそれに従った。背中に回された俊介の腕が次第に下の方にさがってくる。優しくまさぐってくるその手が尻たぶまで届いたところで、貴子はベッドに押し倒された。
「ね、お願い。縛って欲しいのっ・・・。」
貴子はどうしてもその言葉を口にしないではいられなかった。そんな事を言う自分が恥かしいとは思ったが、俊介に嫌われるのではという気持ちはなかった。俊介との間の事が長続きするとは思えなかったからだ。それよりも、貴子にはどうしても確かめておきたいことがあったのだ。俊介とは、いや夫の和樹以外の男に抱かれるチャンスはもう巡ってこないかもしれない。そう思うと、そうせずにはいられないのだ。夫に縛られて服従させられながら犯されるようにセックスをする。その事には屈辱しか感じられなかった。それなのに、あの清里での俊介とした縛られてのまぐあいで自分は確かに悦びを覚えていた。そんなことが本当だったのか、もう一度どうしても確かめたかったのだ。
「いいんですか、奥さんっ。」
俊介にも目の前の憧れの女性を縛るということは刺激的なことだった。しかし、憧れがあるが故にためらいもあった。
「お願いっ・・・。して欲しいのっ。そのサイドテーブルの抽斗に縄が入っているから。」
ベッドサイドに縄を用意していることを知られてしまうのに躊躇いはなかった。自分にそういう嗜好があるというのも、俊介になら知られても構わないと思ったのだ。
「これですね。本当にいいんですね。」
「ええ・・・。そう。でももっと乱暴にしてっ。」
そう言われて、俊介は躊躇いを捨てた。貴子の身体を乱暴にうつ伏せにさせると、その上に馬乗りになる。手にした縄を扱いて、貴子の手首を捉えると背中で捩じ上げる。俊介も知らずのうちに興奮してきていた。
(ああ、縛られる・・・。)
両手を背中で交差させられ、その手首に縄が巻かれると、貴子は身体の中で屈辱ではない何かが燃え上がり始めるの感じていた。
俊介は貴子の両手の自由を奪ってしまうと、肩を掴んで仰向けに返す。目の前の胸の膨らみを目にすると我慢が出来なくなった。夢中で貴子のブラウスのボタンを外そうとするのだが、焦っているのでなかなか上手くゆかない。過ってボタンを一つ、弾き飛ばしてしまう。
「あっ、ご免なさい。」
「いいから、早く脱がしてっ。」
貴子も俊介がブラウスを脱がしやすいように身体を反らして胸を持ち上げる。やっとのことでボタンを全て外し終えると肩からブラウスを背中のほうへずらす。手首を縛っているので、背中のほうへ肌蹴させることしか出来ない。俊介の目に刺繍を施されたシルクのブラジャーが飛び込んでくる。その膨らみを包み込むカップの部分を両手で鷲掴みにする。
「待って、俊ちゃん。ストラップを外して。そして背中でホックを外すのよ。」
俊介が言われた通りにストラップをカップの上部分から外し、背中へ手を伸ばしてブラジャーのホックを探る。
「外れたっ。」
自由になったブラを剥ぎ取ると横へ放り投げる。貴子の裸の乳房がぶるんと震えた。
俊介はその乳房の上の尖った突起にむしゃぶりつく。同時に片手を貴子のスカートのほうへ伸ばしていく。
「あっ・・・。」
既に自分でも潤みを感じていた貴子は一瞬、脚を閉じ掛けるが、すぐに力を抜いて俊介のまさぐりを受け入れる。俊介の指がスカートの裾を掴んで上へ捲り上げる。露わになったはずのショーツの膨らみ部分を俊介の掌が包み込む。
「凄いっ。もう湿っているんだ。」
「嫌っ、言わないでっ・・・。」
自分から縛って欲しいと言っただけに、濡らしてしまっている下着を蹂躙されるのを拒むことも出来ない。すぐに指がショーツの端から滑り込んできた。ピチャッと音がするのを貴子も俊介も聞き逃さなかった。
指先にぬめりを感じた俊介は、貴子の乳首を放して、顔を下半身にスライドさせ、両手で貴子のショーツを膝上付近までずり下ろす。叢を失ったビーナスの丘の割れ目からはピンクの肉襞が覗いている。堪らず俊介はその部分にしゃぶりつく。
「ああっ・・・。」
膝に絡まったショーツの為に、脚を開けない貴子は自分から膝を曲げ、ショーツを踝まで絡め下げ、足首を抜き取る。自由になった腿を大きく広げ、俊介の口を迎え入れる。
「ああ、いいっ。いいわぁ・・・。」
むしゃぶりついた俊介の唇から貴子の陰唇の中へ、ざらっとした感触の舌が差し込まれてきた。貴子は気が遠くなりそうな気がした。
「す、吸ってぇ。」
ジュルっと貴子の陰唇が大きな音を立てた。思わず貴子の脚が俊介を放すまいとばかりに俊介の首を締め付けてしまっていた。
「待って、俊介っ。貴方もブリーフ、取って。」
これ以上されたら、気を失ってしまいそうになって、貴子は慌てて言ったのだった。
(クニリンガスだけでお終いにしたくない・・・。)
ベッドに立ち上がってズボンのチャックを下ろしている俊介の前に、貴子は縛られたまま身体を起こす。ズボンを下ろした俊介の股間はびんびんに勃起しているのがはっきり判る。その屹立したモノがブリーフを押し下げた瞬間に跳ね上がった。
「ああ、凄いわ。私に咥えさせて・・・。」
ねだるように顔を寄せると、上方に反りあがっている俊介のそのモノに今度は貴子がしゃぶりつく。
「うぷっ・・・。」
俊介のペニスは貴子の予想以上に太く、咥え込むには更に大きく口を開かなければならなかった。涎が口の端から垂れそうになるが、貴子はペニスを放さなかった。
「んぐっ・・・。」
俊介が貴子の喉奥までペニスを挿し入れようと一歩踏み込んでくる。貴子が後ろに倒れないように片方の手で貴子の後頭部を支え、更に自分の股間のほうへ押し付ける。自由を奪われてペニスを口の中に押し込まれているのに、屈辱感はなかった。それどころかぞくぞくっとするような刺激が身体の奥底から湧き上がってくるのを貴子は感じていた。
「ああ、いいっ。」
貴子が唇をすぼめ、口の中の筋肉を硬直させて俊介のペニスを締め付けてきたので、思わず俊介も声を挙げてしまう。
「あああああ・・・。」
俊介が感極まってきたのを観て、貴子は慌てて口からペニスを放す。
「駄目よっ。まだイっては。う、後ろから、してっ・・・。」
そう言うと、貴子は俊介に背を向けて、土下座のように頭をベッドの上につける。縛られたままの貴子は、手首で指を絡めるようにして、ペニスを欲しがる仕草をする。
「いくよっ・・・。」
俊介の両手が貴子の白い尻たぶを両側からしっかり捉える。と、次の瞬間、熱い肉棒が貴子の肉襞を割り込んできた。
「深く・・・、深く挿してえっ・・・。」
その甘えた声に俊介は腰を落として一気に押し込んだ。
「あああああ・・・」
今度は貴子が悲鳴を挙げる番だった。
「いいっ。いいわぁああ・・・。」
貴子も堪らず腰を振る。それに合わせて俊介もペニスを前後に出し入れする。
「ああ、いいわ。いいわっ・・・。」
俊介は更に縛られている貴子の手首をつかむとペニスを突っ込んだまま、真っ直ぐ貴子の身体をベッドに押し倒す。俊介のペニスが貴子の陰唇を更に深く抉る。カリの部分がクリトリスの裏側を擦りあげる。
「あっ、駄目っ。洩れちゃいそう・・・。」
初めて知ったGスポットへの強烈な刺激に、貴子は悲鳴をあげた。それでも俊介は突きを緩めなかった。
「いい、いい・・・。あっ、駄目っ、ダメッ・・・。」
もう貴子も自分が何を言っているのかわからなくなる。
「おおおおっ・・・。」
今度は、俊介が最後の雄たけびを挙げはじめる。
「待ってっ。出さないで。口に、口にしてっ。」
慌てて貴子は身体をひねる。すぽっと俊介のペニスが抜けると、貴子は必死でその太い肉塊めがけて、飛びついた。
「うぉおおおお・・・。」
俊介が身体をのけ反らせるのと同時に、貴子の口の中が熱いもので溢れかえる。俊介がへなへなと後ろへ倒れこむのを、ペニスを離させまいと貴子も咥え込んだまま一緒に倒れこむ。
ごくんと嚥下すると、更に新しい飛沫が口の中へ溢れてくる。一滴も洩らすまいと、唇をすぼめ、舌を絡めて搾り取るように舐めまわす。貴子の口のなかで肉塊が暴れまわる。
ごくっと最後の精液を嚥下する。口の中が粘っこいもので溢れかえっているが、貴子は口からペニスを放したくない気持ちでいっぱいだった。しかし、暴れていた肉棒はやがて力を喪ってくるのが貴子にも感じられる。
貴子が俊介の股間から顔を上げると、口の端から白いものがすうっと糸を引いて垂れ落ちた。背中の戒めが貴子にそれを拭うことを許さない。貴子は舌をだして、糸を引く雫を舐め取る。
「ああ、気持ちよかったっ・・・。」
溜息とともに、俊介が深く息を吐きながら言った。貴子もそのまま後ろ向きに倒れこむ。
(呑んだわ。夫の時は吐き出さねば居られなかったのに・・・。)
喉の奥に流れ込んでゆく、熱いザーメンの感触を、余韻とともに思い返す貴子だった。
(これが本物のフェラチオの味わいなのね・・・。)
貴子は何故かとても満たされた思いを全身に感じていた。
俊介が起き上がってきて、貴子の上にのしかかり、唇を重ねてくる。
「むむむっ・・・。」
まだ精液にまみれている貴子の唇を俊介が嘗め回し、しっかりと唇を合わせたかと思うと、舌を絡めてきた。その舌を貴子の舌が迎えあげる。貴子も初めて経験する濃厚なディープキスだった。
その舌と舌の絡め合いに刺激されたのか、貴子は太腿に当てられた俊介の下半身に再び力が蘇ってきているのが感じられた。
はっとなって、貴子は唇を離すと、くるりと向きを変え、縛られたままの手を伸ばして俊介のペニスを探る。膨らみ始めている肉棒を指先が捉えると、貴子は両手に優しく包み込み、それから次第に力を加えてゆく。肉塊はそれに答えるかのように、更に硬さをまし反り返ってくる。
「もう一度・・・、出来る・・・かしら。」
貴子が甘い声でそう囁くと後ろから裸の肩を抱くようにして俊介が身体を寄せてきた。
「強く握ってごらん・・・。」
俊介の声に、貴子が掌の力を更に強めるが、それを跳ね返すかのようにペニスが益々大きくなってゆく。
「ああ・・・、してっ。」
堪らなくなって、貴子はペニスを放すと、仰向けになって両脚を大きく広げる。その両脚の間に俊介が仁王立ちになる。既に股間のモノは天を向いていた。そして、ゆっくりと俊介は腰を落としてゆく。
ゆっくりと挿し込まれる太い肉塊に、貴子は股を裂かれてしまうのではないかと思うほどの力を感じる。
「ああ、凄いわ・・・。」
俊介はペニスを挿入したまま、貴子の足首をつかみ上へ持ち上げる。両脚を掲げて、肩に掛けるようにして持ち上げると、ペニスが更に奥まで突き刺さってくる。俊介が腰をくねらせるので、肉棒が貴子の膣奥深くで肉襞を掻き回す。
「ああ、締まってきたっ。凄いっ。凄いです、奥さんっ。」
「ああ、わたしも堪らないわ。もっと、もっとよっ。」
「ああ、いい。いきそう・・・。またイってしまいそう。」
「いいのよ。いって。いってしまってっ。私の中で出してっ。」
「ああ、ああ・・・・。」
「ああ、出してぇ・・・。」
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