spierd

アカシア夫人



 第四部 突然やってきた闖入者




 第四十一章

 「どうやら折檻は受けなくて済みそうだね。荷物も調べさせて貰うよ。」
 そう言って、和樹は貴子のショルダーバッグの中を探り始めた。それを見て、貴子は心配が杞憂でなかったことを知り、念の為に駅に買ったものを置いてきてよかったとほっと胸を撫で下ろす。このところの疑り深い和樹の執念のようなものに、嫌な予感を憶えていたのだった。
 荷物を調べ終えると、ベッドにうつ伏せになって縛られたままの貴子の上に和樹が乗ってきた。ベルトを緩め、ズボンを下ろしているのが気配でわかった。尻を持ち上げられていきなり後ろから挿入される。貴子は繋がったというより犯されたと感じだのだった。



 貴子が東京へ独りで外出させて貰った日から二日経って、また和樹が数日山荘を空ける前の日になった。荷物は駅のコインロッカーに置いたままだった。そろそろ引き揚げないと撤去される惧れがあると貴子はやきもきしていた。
 「明日は三河屋が来る日だったよなあ。」
 貴子は和樹に見透かされているのではと、どきっとした。
 「明日からまた東京だから、今のうちに身体検査しておこう。」
 和樹は居間で新聞に目を遣りながら、事も無げにそう言うのだった。背後のカウンターのところで皿を拭いていた貴子だったが、逆らっても仕方ないと従順に振舞うことにした。

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 皿と布巾を置くと、エプロンをしたまま、新聞を広げている和樹の横に立つ。スカートはエプロンよりも短いものだ。先にショーツを膝まで下ろし、エプロンごとスカートと一緒に上に持ち上げる。和樹が新聞から目を離して自分のほうを向くまで、貴子は股間を晒したままでいなければならない。股間は前の晩に予感がして、風呂を使った際に自分から剃りなおしておいたのだった。
 その無毛の股間をちらっとみただけで、和樹は新聞を置いて、立ち上がる。
 「ちょっと一緒にカウベルに行こう。」
 和樹が貴子を山小屋喫茶に誘うのは、最近では珍しいことだった。何かあると貴子は感じた。

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 「行く前に、これに穿き替えておきなよ。」
 そう言って貴子に手渡してきたのは、紙オムツだった。

 夫の言いつけ通りにショーツを脱いで紙オムツを嵌めて出てきた貴子は、夫の運転するレンジローバーに乗り込む。和樹はエンジンキーを回す前に貴子に向き直る。
 「あの三河屋の若いの、何て言ったっけ。」
 「えっ、俊介さんでしょ。いい青年よね。」
 「そうかな。あいつ、何時も家に来る時、お前の脚をじっと見てるよな。」
 和樹の鋭い指摘に貴子はどきっとする。貴子自身も感じていたことではあった。
 「そんなことはないと思うけど。あの人から見たら、私はいい歳したオバサンよ。」
 貴子は心の中では、貴方が私にいつもミニスカートを穿かせるからでしょと言いたかったが、それを喉もとで呑み込む。
 「あいつ、お前があそこの毛を剃り落しているって知ったら、変態だとさぞかし驚くだろうな。」
 「嫌っ、お願いだからそんな事言わないで。私、知られてなくても恥かしくってたまらないのだから・・・。」
 その言葉を最後に和樹は無言のまま、車をスタートさせる。
 (でもあの人にはもう知られてしまっている・・・。それでいて黙っていてくれているのだわ。知らないのは和樹さんだけ。でもその事は悟られてはならない・・・。)
 貴子は、和樹の前では恥かしさを装ってでも、気づかれないようにしなければならないと決心するのだった。

 「あっ・・・。」
 カウベルの音を立てて、山小屋喫茶の扉を潜った貴子は、店の中に俊介の姿を見つけて思わず声を挙げてしまった。俊介はその日は非番だというのは知っていたが、夫と一緒のところで出遭うとは思っても見なかったのだ。
 「やあ、こんにちは。今日は休みなんだね。」
 俊介の前を通り過ぎていつものカウンタ席に向かいながら和樹も声を掛ける。その夫に付き従いながら、貴子は会釈だけ通り過ぎる。

 「そろそろ出したくなってきただろ。」
 和樹は見透かしたように貴子に小声で話す。三河屋の俊介からはちょっと離れているので声は聞こえない筈だ。
 「止めて、ここでそんな事言うのは。」
 しかし、貴子はさっきからトイレに立とうか迷っていたのだ。和樹もそれを見越していたようだ。紙オムツを嵌めるよう命じられてから、出掛けにトイレに寄ることも止められていたのだった。
 「あいつの傍に行って、立ったまま出してくるんだ。」
 「そ、そんな事。出来ないわ。」
 「やれるさ。やるんだろ、僕の為なら。」
 和樹の口調には有無を言わせないものがあった。言う通りにしないと、スカートの下に何を着けているのかばらしてしまうぞと言わんばかりだった。
 「マスターっ。ちょっと店の中で写真撮っていいかな。」
 和樹は突然、店の奥のマスターに声を掛ける。マスターはどうぞご自由にと言わんばかりに頷いている。
 「じゃ、そこに立って。」
 和樹は三河屋の俊介が座っているテーブルの直ぐ前の位置を指差しながら、ポケットからデジカメを出して待っている。
 貴子は和樹が言い出したら聞かないことは重々承知していた。観念して和樹が言う位置に立つ。すぐ後ろには俊介が居るのを意識する。

madam

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