妄想小説
恥辱秘書
第三章 奴隷たちの対決
五
更衣室の扉から中に入った美紀は、そこに予想もしていなかったさきほどの女性の姿を認めた。
女は片手をパイプに手錠で繋がれていた。女の足元から少し離れた場所に洗面器があって、そこに入っている液体が湯気をたてている。言われなくても何かは想像ができた。女のものだったらしい下穿きが、すぐ傍の床に落ちていた。
どういう事情かは理解できないものの、今がどういう状況なのかはすぐに判った。が、今の美紀には自分のことで精一杯だった。
「私の手錠の鍵の在りかを教えてください。」
手を背中に回したままの格好で美紀はその女に言った。
「まず、その洗面器の中にある鍵を拾って。それはこの手錠の鍵なの。それをまず拾ってこれを外して頂戴。」
美紀の前の女はそう言った。淡々とした感情をこめない言い方だった。
美紀はちょっと躊躇った。洗面器のその液体が何なのかは薄々わかっていたからだ。
手錠で繋がれた女にはその洗面器は届かない位置に置かれていた。だから美紀に頼むしかなかったのだ。美紀も後ろ手に手錠を掛けられていて自由は利かない。しかしこの場から逃れる為にはそうするしかなかった。
美紀は考えないことにして、後ろ手に手探りで洗面器の中に指を突っ込んだ。女のほうに向くとスカートの奥を覗かれてしまうので腰を横に向けて折り、手錠の両手を洗面器の小水の中に突っ込んだ。ぬるっとした感触をおぞましく思っている余裕は美紀には許されていなかった。小水らしいものを指先から滴らせながら、鍵を拾い上げると背中を向けてその女の手錠に手をのばした。が、女は美紀の手から乱暴に鍵をひったくると自分で手錠の鍵をはずした。
先に晴江のほうが自由の身になった。両手を後ろ手に拘束された美紀が晴江に自由を請う番になった。
洗面器の前に腰を落とした美紀が晴江を見上げて言った。
「私の手錠の鍵の場所を教えてください。」
美紀にはとても屈辱的なことだった。見ず知らずの自分より若い女に頭を下げて自由にしてもらうことを頼まねばならないのだった。が、その女の口から出た言葉は予想を裏切る冷酷なものだった。
「貴方を自由にする為には、貴方には受け入れてもらわなければならないもうひとつのことがあります。その、そこにある洗面器の中身を頭から浴びせて欲しいと私に頼まなければならないのです。それを頭から被れば、鍵の場所を教えてあげます。」
晴江は芳賀に命じられた通りの言葉を発した。目の前の女には憎しみも哀れみもなかった。ただ、芳賀の命令に服従することしか今の晴江にはなかったのだ。
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