妄想小説
恥辱秘書
第十章 新たなる調教
五
男は美紀の両手首を掴んで背中に廻させると、後ろ手に縛り上げ、余った縄をスーツの上からバストの膨らみの上と下に回してきつく締め上げた。その間に、壇上にはなにやら奇妙なものが次々と運ばれてきていた。
それは、大きな積み木といった風の高さの異なる幾つかの直方体の塊だった。何かの踏み台のようにも見えた。それらが高さの順にすこしずつ離して2列に並べられると、それはあたかも死刑台への階段のようにも見えた。2列の間隔は脚を広げてやっと立てるぐらいの40cmぐらいが空けられていた。5段目になる一番高い台はステージから1mほども高くなっている。
そしてその一番高い台の真正面にひとつの丸テーブルが据えられた。テーブルの上には見事な装飾の燭台が置かれ、一本の太い和蝋燭が立てられていた。
それらが後ろで用意されている間に、美紀はステージ正面に客に向かって立たされていた。男の手が美紀の着けているアイマスクの仮面を剥ぎ取った。美紀の素顔が観客の前に露わにされた。観客皆が、マスクで顔を隠している中で、自分だけが素顔を晒させられる恥ずかしさに、美紀は思わず顔を俯かせる。
美紀を縛った男が美紀の前にうやうやしく頭を下げしゃがみこむ。そして、美紀のスカートの中に手を突っ込んだかと思うと、左右の腰骨のところから美紀の下着の端をつかみ、それをゆっくりと下げ始めたのだ。
美紀にはどうすることも出来ない。男は観客に楽しませるかのように、わざと少しずつ焦らすように、美紀の下穿きを下げていく。スカートの裾からやがてパンティの端が覗き、次に膝小僧のところまで下げられたところで、男は一旦止める。男が身を避けると、照明が一旦消え、ピンスポットライトが美紀の膝まで下げさせられたパンティだけを照らして、闇の中に白い布切れが光って見える。美紀は恥ずかしくて堪らないのだが、魔法でもかけられたかのように身動きひとつ出来なかった。観客席の全ての視線が、美紀の下穿きに注がれているのが痛いように感じられる。それは自分の恥部を見つめられているのと同じ恥辱感を与えていた。
観客に十分それが晒された後、いつの間にか後ろから近寄ってきていた男が手にした鋏で横の部分からシャキンと切り落とされた。両サイドに鋏がいれられて美紀の膝もとから奪われたその下着は男の手で一旦宙に掲げられてから、いつのまにか据えられていた帽子掛けのような台のてっぺんに広げられて晒し物になった。
(やめて~)と叫びたい美紀だったが、まわりの異様な雰囲気に圧倒されて、声が出ない。
次に美紀は男に促されて、死刑台のようになった踏み台の段の前に導かれた。男は手振りで上がるように命令する。二列になった階段状の踏み台は、脚を広げてがに股風にならないと昇れない。その頃には照明は階段全体をぼおーっと明るく照らし出していた。美紀にはそこから逃れる術はないように思われた。
高さが恐怖感を与えたが、周りは暗くてよく見えないので美紀は自分が宙に浮いているような錯覚を覚えた。観客席はステージより低めになっている上に、階段は更にそこから高くなっている。
タイトなミニのスーツは脚を開いて段を上がると、観客席からは、腿の上のほうまでが覗いてしまう。とうとう最上段まで美紀は昇らされると、最上段以外の踏み台は男達の手で取り除かれてしまった。最早、転落することでしか壇上から逃れることも出来なくなってしまった。
突然ドラムロールが鳴り響いた。目の前のピエロの司会者がライターでカチリと火を点した。観客の前に掲げてかざした後、美紀が乗った台の目の前に置かれた丸テーブル上の燭台の蝋燭を点燈する。かすかな風の動きに、和蝋燭の大きな炎が妖しくゆらめく。
その時、漸く、美紀は何を要求されているかを悟ったのだ。そして、これまで芳賀が延々と仕込んできた調教の訳を。
美紀は、自分の運命を呪った。
唇を噛んで口惜しさに身を拉がれる思いをかみ締めた。屈辱感に涙も浮かんできた。が、それと同時に不思議な高揚感にも包まれ始めていた。
膝をゆっくり緩め、少し身を屈めて中腰に近い格好になる。股の付け根までが露わになってしまうかもしれなかったが、もうそんなことはどうでもいいような辱めを受けていた。
股間からぽとりと、滴が洩れて、ステージの床にピチャっと音を立てて落ちたのを聞いた。美紀は括約筋をぎゅっと締める。下腹部に渾身の力を篭める。目を閉じてタイミングを見計らった。
ビュッと音を立てて、勢いよく小水が美紀の股間から迸り、一撃で和蝋燭の炎をジュっと消した。「おおぅ。」という溜め息が最初に流れ、それから拍手喝采の嵐が鳴り響いた。しかし、それは賞賛だけではなく、あざけりの罵声と嘲笑も含まれているのを美紀は聞き逃さなかった。
拍手が鳴り止んでいくとともに、観衆の意識も、見事な曲芸技の驚嘆から、次第に立ったままの放尿という滑稽な姿を披露させたという嗜虐的な思いへと移っていた。
美紀は、今自分が為した技のはしたなさに恥ずかしく、赤くなった顔もあげられないでいた。
やがて、飛行機のタラップを小さくしたようなキャスターの付いた階段が美紀の載せられた台の前に運び込まれ、司会のピエロが段を上がって美紀の近くへやってくる。そして壇上の美紀に向かってマイクを差し向け「どうでした。一発で獲物を仕留めたご気分は。」と嘲るように美紀に感想を語らせようとする。
美紀は恥ずかしさに顔を背けて俯くしかなかった。
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