演技7

妄想小説

恥辱秘書






第十章 新たなる調教


 四

 明かりが一旦消えて、再度点いた時にはステージ上に一人の裸の女性が正座していた。女性は両手を後ろ手に縛られ、乳房を繰り出すように胸にもきっちりと縄がかけられている。女性が身に着けているのはその胸のまわりの太い縄だけで、下半身はまったくの裸だった。
 美紀は、はっと息を呑む。芳賀が美紀を連れ込んだのはSM倶楽部だと気づいたのだった。
 スポットライトを浴びた裸身の女性は、次にステージ上に立った黒覆面の男が手にした鞭で、剥き出しにされた乳房をしたたかに打たれる。最初の鞭打ちで女性が悲鳴を上げると、思わず美紀は席を立とうとするが、芳賀の手で制される。美紀は黙って、ステージの女の被虐シーンを見続けなければならなかった。

 ショーは幾つか続いた。天井から下げられた鎖に両手を繋がれて立たされた全裸の女性が陰部になにやら薬を塗られ、痒さに悶えて、最後は男にバイブを当ててくれるように頼んで行かされるもの、寸劇のコント仕立てで、制服の婦人警官が数人の暴漢を次々に当身で倒すのだが、人質を盾に取られて降参させられ、縛られて折檻を受けるもの、股間に男性の陰茎を模ったディルドウを着けた女に犯される大の字に繋がれた女などが次々に舞台上で演じられた。

 明かりがまた消えた。暗闇の中から案内役のピエロの声が聞こえてくる。
 「本日の最後は、特別な趣向の演技があります。皆様には特異な技を持った素人女性の曲芸をご覧にいれます。」
 その挨拶の後、真っ暗闇から突然スポットライトが美紀のほうに中てられたのだ。美紀は何が何だか判らなかった。芳賀は横から、有無を言わせぬといわんばかりの面持ちで顎をしゃくり、(立て)と合図する。美紀は訳がわからないながら、促されるままに立ってしまい、周りの観客からの拍手の中を、ピエロに曳かれるままにステージ壇上にいつの間にか立ってしまっていた。

 拍手がやむとあたりはしーんと静まり返る。壇上の美紀からはまわりの観客席は暗くて何も見えない。スポットライトを煌々と当てられた自分の身体だけが浮き出ていた。
 美紀のその日のいでたちは、ちょっとミニのタイトなビジネススーツで、いかにもやり手のキャリアウーマンそのものという雰囲気を漂わせている。実際、美紀がそうありたいと思って、演出している着こなしなのだった。舞台の後ろから男が縄を手に近づいてきた。
 (縛られるのだわ。)すぐそう直感した。しかし、あまりの突然な展開に、どうしていいか判らない。美紀はただ為されるがままに立っているしかなかった。

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