妄想小説
チア部顧問に課せられる試練
六
「おい、須藤。いいの、撮れたか?」
「あ、井上さん。ふヒヒヒっ・・・。ばっちりですよ。ほらっ、こんな感じ。白の生パンっすよ。」
須藤は自慢げに江莉子が演技に没頭しているすぐ前からデジカメだけ脇の下からこっそり突き出して撮った写真を井上に見せる。
「ふうむ。結構よく撮れてるじゃないか。お前にしちゃ上出来だな。」
「でもよく今日はあの興醒めなアンスコじゃなくて、生パンしか穿いていないだなんて分かったんですかい?」
「ふふふ。いろいろ仕込んであるからだよ。でもまあ、お前はそんなこと知らなくていいから。」
「そうすか。で、どうするんです? この写真使ってあの小生意気なチア部キャプテンを脅して言う事を聞かせて遣りたい放題するって訳ですかい?」
「ばーか。このくらいの生パン写真を撮られたぐらいで言いなりになる女が居るかよ。こいつは次のステップの囮に使うんだよ。もっと決定的な写真を撮るためにな。」
須藤には井上が次に何をしようとしているのかは分からなかったが、最後には憧れの江莉子を貶めることには違いないと期待に胸を膨らませるのだった。
井上が自分がチア部顧問の早乙女圭子に見せたその写真を須藤から見せられたのは更に数日前の事だった。
「どうです? いい写真でしょうが・・・。」
「ほう・・・? どうしてこんな写真、お前が持っているんだ?」
「実はですね・・・。」
須藤が井上に語ったのは中学生時代の話だった。須藤はチア部キャプテンの苅部江莉子とは同じ中学だったのだ。中学入学当初から須藤は中学全体の中でも人気者だった苅部江莉子に憧れていた。しかしどちらかと言えば落ちこぼれの不良生徒だった須藤に江莉子が関心を抱く筈もなかった。それで須藤は同じ不良仲間の数人と江莉子を貶める作戦を立てたのだった。
江莉子が同級生の女子たちと交わしていた話を盗み聞きした者が居たのだ。
「江莉子さんて、勉強も出来るし、スポーツも得意だしいいわよね。羨ましいわ。江莉子さんて、苦手なものは何もないんでしょ?」
「あら、私にだって苦手なものはあるわよ。そうねえ・・・。例えば、爬虫類とか両生類っ。ほらっ。理科の授業で標本とか解剖とかあるじゃない。ああいう時に、爬虫類とか両生類って出てくるのが私、とても苦手なの。ちらっと観ただけで虫唾が走るっていか、ぞぞっとして震えちゃうの。」
「へえ・・・。そうなんだ。」
そんな会話を小耳にはさんだことで、須藤の悪企みが頭に浮かんだのだった。
その当時、江莉子はクラスの学級委員の常連だった。ただ正副居る学級委員の正の方は男子生徒がなることが多く、それはクラス一の秀才と呼ばれていた樫山琢也がなることが殆どで江莉子は常に副学級委員だった。その江莉子は正学級委員に惚れているという噂がクラス内では密かに公然の秘密として交わされていたのだった。
只の噂ではないと感じ取った須藤は妬みから琢也を使って江莉子を陥れることを策略する。仲間の不良数人とつるんで、琢也からの手紙を装って江莉子に休日の学校に呼び出すことにしたのだった。そしてその贋の手紙に江莉子はまんまと引っ掛かってしまったのだった。
休日の誰も居ない学校の体育館に琢也からだと思い込んで運動具倉庫に来て欲しいと言う密会の誘いに乗ってしまった江莉子は待ち構えていた須藤等の仲間にあっと言う間に目隠しをされ両手を後ろ手に縛られて羽交い絞めにされてしまう。
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