妄想小説
チア部顧問に課せられる試練
四
既に誰も居なくなったスタンド真下のロッカールームがある辺りは遠くから聞こえてくる応援の歓声が微かに聞こえてくる他はしいんと静まり返っていた。その男子ロッカールームで圭子を待ち受けていたのは井上敏明だった。井上も須藤と同じように帰宅部で運動部には所属していないらしいことは圭子も知っていた。それだけでなく、西湘高の中では不良グループと噂されている連中のリーダーらしいこと圭子は噂で聞いて知っていたのだ。
「あら、井上君じゃないの。珍しいわね。野球部の応援にやって来るだなんて。もうすぐ試合が始まるのよ。こんな所で何の用かしら?」
「別に野球の応援に来た訳じゃねえよ。早乙女先生にはちょっと観て貰いたいものがあってね。」
「観て貰いたいもの・・・? いったい何かしら?」
何となく嫌な予感に駆られながらも井上の傍に近づいていって、圭子は井上が差し出している一枚の紙きれのようなものをちらっと見て顔を蒼褪めさせる。それはプリントアウトされた一葉の写真なのだった。
「こ、これって・・・。」
そこに写っていたのは一人の少女が床にぺたんと尻を付いて股を大きく広げてしゃがんでいる写真だった。膝を立ててしゃがんでいるので少女が穿いている下穿きは丸見えになっている。そればかりかその下穿きの中心部は濡れそぼっていて床には水溜まりまで出来ている。少女は明らかに失禁しているのだった。圭子が驚いたのはそのあられもない姿だけではなく眼の部分が黒いマジックで塗りつぶされているものの、圭子にはそれが誰だかすぐに判別が出来たからなのだ。それは自分がチア部で手塩にかけて指導してきたキャプテンの江莉子に違いないと気づいたからだった。
「な、何なの。この写真・・・。ど、どうして・・・。」
いきなり自分の教え子のあられもない恥ずかしい姿を見せられて狼狽えて言葉が出ない圭子だった。
「この写真、俺の知ってる奴が東雲高の氷室恭介に渡そうとしてたんで俺が待てって止めたんだよ。どう見てもウチの西湘高の女子生徒だって気がしたんでさ。」
「い、井上君もこれがうちの生徒だって気づいたって言うのね。」
圭子には井上もこれが西湘高の誰なのかは気づいているのだとすぐに判断した。
「よく止めてくれたわ。駄目よ。こんなの・・・。他の学校の・・・、しかも東雲高の不良番長みたいに言われている男に渡すだなんて・・・。こ、この写真・・・。私に預からせて頂戴っ。」
「いいよ。その写真はコピーの一枚だから。でも原本とか他のコピーとかどうしたらいいか先生に相談しておいた方がいいかなと思ってさ。」
「原本? 他のコピー・・・? この写真、まだ他にもあるって言うの?」
「そういうの、どうしたらいいか。先生とじっくり相談しようと思ってさ。」
「えっ? 何、言ってるの・・・。相談だなんて・・・。」
その時、井上が切り出したのがこの写真を何とかしたいのなら一人で翌日の日曜日に学校に独りでやって来ることという話なのだった。井上は圭子が自分等が言うことを何でも聞いてくれるのなら写真を渡してもいいというのだった。その手始めの条件として圭子に休日の学校に独りでそしてテニスウェアの格好で来るようにと言い渡したのだった。
次へ 先頭へ