廊下テニスウェア

妄想小説


チア部顧問に課せられる試練



 一

 「さあ、言われた通りテニスウェアに着替えてきたわ。」
 そこは生徒達も教師も誰も居ない筈の休日の職員室前の廊下だ。正式のスポーツウェアの格好とは言っても、事情を知らない誰かに見られるのはとても恥ずかしい格好だ。特に股下ぎりぎりまでしかない短いスコートは選手だった大学時代にテニスの試合でコートに立っていた時でも恥ずかしかった。それを試合でもないのに身に着けさせられるのは羞恥と屈辱の思いでしかなかったが、圭子は生徒等にその気持ちを見透かされないように態と気丈な態度で臨んだのだった。
 「さすが元テニス部のエースプレーヤーだっただけあって様になってるじゃないか、早乙女先生。言うとおりにテニスウェアに着替えてきたってことは、俺たちの言うことを素直に聞く覚悟が出来たって思っていいんだな?」
 圭子を呼び出してきた不良グループのリーダーを務めているらしい井上敏明が短いスコートから自慢の長い脚を露わにして立たされている圭子の姿を見てあらためて圭子に詰問する。
 「私の教え子の危機を救う為だったらこれぐらいのこと、何でもないわ。」
 圭子は教え子の秘密を守って貰う為だったら言われたことは何でもしてみせると誓わされたことを思い返していた。それがテニスウェアを着て休日の学校の廊下に現れることだけで済むとは圭子自身も思ってはいなかった。
 「これぐらいのこと・・・? さすがに先生は勘がいいね。」
 「職員室の前の廊下にテニスウェアで来いって言ったって、まさかこれからテニスの試合がしたいなんて訳じゃないんでしょ?」
 「よく状況が理解出来ているようだね、早乙女先生。勿論、先生とテニスの試合がしたいなんて思ってなんかいないよ。もししたとしてもコテンパンにやられるだけだろうからね。」
 圭子はそう言われて、もしかしたら自分とテニスの試合をして敗けたら教え子の恥ずかしいデータを渡してくれると持ち掛けてくれるのではないかと思っていた自分の浅はかな期待が早くも打ち砕かれたことに落胆よりも自分の軽率さを恥じ入る気分でいっぱいだった。

keiko

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