妄想小説
チア部顧問に課せられる試練
二
早乙女圭子が休日の誰も居ない筈の校舎にテニスウェアの姿で来ることになったそもそもの始まりは前日の圭子たちの母校、西湘高校の野球部がライバル校である東雲高校野球部と県大会出場を賭けての予選試合へ圭子が顧問を務める西湘チアリーダー部を引き連れて市内の総合グランドの野球場へ応援に駆け付けたことによるのだった。
圭子は大学時代まではテニス部に所属していてチアリーダーの経験など皆無だったのだが、西湘に赴任してから前任のチアリーダー部顧問が急に辞めることなって校長からどうしても引き受けて欲しいと頼まれたのだった。チアリーダー部はキャプテンを苅部江莉子という子が務めていてしっかり統率しているので圭子には顧問として引率してくれるだけでいいからというので乗り気ではなかったが仕方なく引き受けることにしたのだった。
「あれ、香取さん。キャプテンの苅部さんは? まだ来てないの?」
「ああ、早乙女先生。キャプテンだったらもう来てますけど、着替えに手間取っているらしくて。でもう直に来ると思いますよ。」
「そうなの? キャプテンが遅れてくるなんて珍しいわね。」
怪訝に思いながらも圭子は試合開始までまだ時間に余裕があるのでさほど気には留めなかったのだった。
(お、おかしいわ・・・。確かに入れておいた筈なのに。)
苅部江莉子はチア部の女子達が着替え終わって出て行ってしまった後に女子ロッカールームでもう一度チアのウェアを入れてきた自分のバッグを検める。ウェアは一応揃ってはいたもののスコートの下に着けるアンダースコートが何故かどうしても見つからないのだった。
(どうしよう・・・。ああ、でももう試合開始まで時間がないわ・・・。)
時計とにらめっこしながらも最後はその日はアンスコ無しで応援に出るしかないと覚悟を決める。キャプテンの自分が行かなければチア部全員の士気にかかわる。それが元で野球部が敗けたとなれば折角揃ってきたチア部全体の意気も台無しになってしまうと思ったのだ。
「あ、江莉子さん。やっと来たわね。心配しちゃったわ。」
「済みません、早乙女先生。ちょっと着替えに手間取ってしまって。」
江莉子は何でもない風を装いながら、遅れて来たことを顧問の早乙女圭子に謝る。
「それがね、江莉子さん。応援団旗を振る担当の大沢恵美さんが急にお腹をこわしてしまったらしくて出れそうにもないって言うのよ。どうしたらいいかしら・・・。」
「えっ。恵美ちゃんが・・・?」
大沢恵美は江莉子にとって一番の腹心の部下とも言えた。江莉子が次のリーダーを任そうと手塩にかけて育ててきた後輩だった。
「じゃ、いいです。恵美の代わりに旗振りは私が務めます。フラッグトワリングは私も経験があるので大丈夫です。最後列の最上段での演技でいいですよね?」
江莉子は咄嗟にフラッグトワリングを恵美の代わりに最後列の最上段で務めることでアンスコを穿かずに生パンで超ミニのスコートが万が一翻ってしまっても覗き込まれる心配が無いと考えたのだった。
「ええ、それはいいけど・・・。いつもは最前列のセンター役の貴女が後ろに廻ってしまったら、チアの応援が乱れないかしら?」
「私の代わりにセンター役は香取さんにやって貰えば大丈夫だと思います。彼女なら練習でもセンター役はやったことがありますし、いざという時の代理の経験は今後にも生かせると思いますから。」
「そう? じゃ、香取さんにセンター役はお願いしようかしら。香取さ~ん。ちょっと、こっちへ。」
圭子は仕組まれたこととは知らずに香取マリ子に苅部江莉子の代わりに最前列のセンター役を代役として頼み、江莉子は江莉子でスコートの下に生パンしか穿いていないのを最後列に下がることでスコートの中を覗かれる危機から脱することが出来たと思い込んでいたのだった。
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