妄想小説
恥辱秘書
第四章 診療所への罠
四
もう一度控え室に戻り、薄くドアを開けて外を覗う。廊下を歩いていくレントゲン技師の後姿が見えた。廊下の角でその男が脱衣籠にぽいっと下着を投げ込むのをみた。
(早く回収しなくちゃ。)
美紀は意を決して外に走って取ってくることにした。廊下は静まり返っている。(今だわ。)美紀は裸の胸を抱えたまま、廊下に走り出た。音を立てないように小走りで脱衣籠まで辿り着くと、下着と制服をひったくるように掴んで、控え室に走って戻った。ドアノブを掴んで回そうとして異変に気づく。さっきは何でもなく開いた筈のドアが鍵がかかったびくともしない。
(どうして。どうしてなの。)
慌ててドアノブをガチャガチャやるが、ドアは全く開く様子はなかった。その時、火災警報のベルがけたたましく鳴り出した。廊下の向こうでばたばたと音がしている。誰かがやってきそうだった。美紀にもう猶予はなかった。廊下を奥に走り出すと、最初のドアに飛び込んだ。入る時に男子トイレであると気づいたが、女子トイレを探している余裕はなかった。
幸い誰も入っていなかった。すぐ近くの個室に飛び込んで錠を掛ける。
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