良子
- 警察手帳を奪われた女巡査
第三章 騙された若妻
四
男は慎重に辺りを窺いながら、部屋を出て廊下を通り階段を昇って歩いていっているようだった。外に出たように感じた時に、恭子はどさりと袋のまま下ろされた。すぐにバタンと音がしたので車のトランクに下ろされたらしいことがわかった。
エンジンの掛かる音がして、タイヤが軋む音を立てながら走り出すのを感じた。
トランクの中でごろんごろんさせられながら、車は小1時間は走ったように思われた。
ついに車が止まり、トランクが開く気配がして、再び恭子は袋のまま抱き上げられた。
恭子が床に下ろされ、やっとのことで袋の紐が解かれ明るい中に出された。そこはやはりコンクリートの壁に囲まれたところで、真っ暗な中に居たので最初明るく感じたが、薄暗い場所だった。
あたりを見まわし、白い男性用便器を見付けて、男子用トイレの中に居ることに気づいた。ぷうんとアンモニア臭がかすかにしている。
恭子は袋から出され、素っ裸のままでトイレの床のタイルの上にしゃがまされていた。男は袋の口を括っていた紐を取り上げ、恭子の背中に回した手首を掴むと手錠の上から更に紐を使って恭子の両手を縛り上げた。そして恭子の肩を掴んで立たせると、後ろの個室に恭子を引きたてていく。そこは和式便器の個室だった。便器の上を逆向きに跨がせるとそのまましゃがませる。男は恭子に覆い被さるようにして恭子の背中に手を伸ばし、恭子の両手を縛っている紐の端をコックの付いた水道管に繋ぎとめると、ポケットから鍵を出し、手錠だけを外した。
見上げる恭子に、男は再びズボンのチャックを開け、さきほど出し終わって果てた時には萎えていた男根を再び屹立させながら恭子の顔面に突き出した。
恭子にはもう考える余裕すらなかった。ただ、男に奉仕して、その後逃がしてもらうことだけを考えていた。
フェラチオは二度目になるので、だいぶコツが分ってきていた。すぐに男が気持ちよくなるように激しく口でしごいた。
今度はわりに早く絶頂がきた。恭子にも出される瞬間が近づいているのが分った。
「おおっ。」という声がして、(来る)っと恭子が思った瞬間、男のモノは抜き取られ、恭子の髪が乱暴に掴まれた。恭子の顔面に向かって男の精液が放出された。瞼の上から鼻筋を伝って、口元にまで生温かいものが流れた。男は手で乱暴にそのどろっとしたものを恭子の顔じゅうに塗りたくる。顔中がべとべとに汚されると、男はやっと髪の毛を離した。
男が果ててしまうと、恭子の緊張の糸が切れた。締めていた括約筋が弛んで、便器の上に大きく開いていた股の間から小水が流れ始めた。もう恥ずかしさのことは考えていなかった。漏らしてしまうのを止めることも、恭子にはもう出来ないのだった。目の前の放尿する恭子を男はじっと眺めていた。
放尿し終わり、股間から滴がかすかに垂れるだけになると、男は再び恭子に覆い被さるようにして、後ろ手に縛っている紐を少しだけ緩めた。
男は個室の鍵を開け、出ていった。車のドアがバタンと閉まる音がしてから、再び男の足音が近づいてくるのが感じられた。個室の扉が再び開いて、男が現れ、恭子のしゃがんだ膝の上にはらりと赤い布着れのようなものを落とした。それは殆ど下着のようなスリップドレスだった。
そして男は何も言わないまま、扉を閉めて出ていった。車が走り去る音だけが、残された恭子に聞えた。
恭子はその後、膝の上のスリップドレスを便器の中に落とさないように気を付けながら、手首をもがいて縛ってある紐をすこしずつ解いていった。かすかに緩めてくれたおかげで紐は少しずつだが、弛んでいって暫く奮闘したのちにやっと手首からはずすことができた。
スリップを手に立ち上がった恭子は長くしゃがまされていた為に、脚ががくがく震えた。素っ裸で居る訳にもいかず、男が残していったスリップドレスを頭から被って着てみる。丈は極端に短く、股下ぎりぎりまでしかなかった。それでも裸でいるよりはましだった。
恭子は下着もつけないまま。スリップドレス一枚で、公園の公衆便所をでた。財布もお金もないまま、歩いて帰らなければならない恭子だった。
送られてきたビデオテープには手書きで「騙されて逮捕された若妻」と題名が書いてあった。
良子は、中身に不安があったので、警察署では開かず、自宅に密かに持ち帰ってからそれを見た。
ストーリーは、団地の家にやってきた刑事がそこにいた若妻に警察手帳と捜査礼状をみせてから、若妻を柱に繋ぎ、身体検査をして裸にし連行するというものだった。その後も、牢屋風の所へその若妻を押し込め、その中で放尿させるシーンまで撮ってあった。
最後に警察手帳が大写しにされ、それが開かれ、写真と名前から良子の奪われた警察手帳であることが分かるように撮影されていて、そこでシーンは終っていた。
良子は戦慄に襲われた。脳裏に、電車の中で痴漢行為をされた上に、電車の手擦りに縛られ警察手帳を奪われた日のことが蘇えってくる。
(まさかこんなことに使われるとは)
ビデオテープは直接警察署の郵便箱に投函されたもので、差出人もなく誰がいつ持ってきたものかの手掛かりもまったくなかった。
あの日、ほとんど裸のような格好で家まで歩いて夜更けに辿りついた恭子は、既に帰っていた夫にただ泣きつくだけだった。すこし落ち着いてから夫と話しをはじめようとして、初めて変であることに気づいた。夫のほうへは警察はまったく来た気配もなかった。家にもその後、警察から何も連絡がないらしい。起きたことを何もかも打ち明けようと考えていた恭子だったが、話がおかしいことに気づき、起きたことはとりあえずは夫には伏せておこうと思いだした。
夫には、車で出掛けたら、ちょっと駐車している間に車を盗まれ、歩いて帰らねばならなかったと嘘をついた。夫はそれを信用したようだった。
その後、恭子のほうにもビデオテープが届けられ、恭子の騙されたことがはっきり分った。
(馬鹿だった。もう少し冷静になっていれば、贋の警察であることが分ったのに。)
口惜しがる恭子だったが、もう後の祭りだった。考えてみれば、婦人警官でもない刑事が女性の身体検査をするのも変だった。連れ込まれた牢屋のようなところも警察にしては人影が殆どなかったのも変だった。ましてやフェラチオをしたので助けて逃がしてくれた刑事というのも変だ。
すべては仕組まれていたのをやっと気づいた恭子だった。
恭子に送られたテープには、警察官良子の警察手帳を示した最後のシーンは省かれていた。
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