良子
- 警察手帳を奪われた女巡査
第三章 騙された若妻
一
ピンポーン。
ドアでチャイムの音がした。
(夫かしら。)
恭子はアイロンの手を止めて、立ち上がり玄関に向かう。
ドアチェーンを外して、ドアを開けると見知らぬ男が二人立っている。背の高い無愛想な感じの男が胸ポケットから黒い手帳を出して目の前に掲げる。恭子には金色の文字の中に警視庁の文字だけが読み取れた。もう一人の男は小型のテレビカメラの様なものを構えていて、レンズを恭子に向けている。
「お話をお伺いすることがあります、奥さん。失礼します。」
恭子が案内するより前に男たち二人が強引に入ってきた。
玄関の中に入り、小太りだが愛想の良さそうなほうのもうひとりが後ろでにドアを閉め、ロックまで掛けると、先に入ってきた男が胸ポケットから折り畳んだ一枚の紙を取り出し広げる。
「城湾署の特捜班刑事です。麻薬不法所持の疑いで、家宅捜査礼状が出ています。これから緊急家宅調査を致します。」
そう告げると、背の高いほうの男がいきなり恭子の腕を取った。
「あ、あの。ち、ちょっと、・・・・」
男は何と答えていいのか戸惑っている恭子には意も介さない様子で、恭子を玄関から奥のキッチンのほうへ押しやる。
リビングとキッチンと廊下の間の柱を背に恭子を立たせると、男はいきなり手錠を取り出し、恭子の手首に掛ける。
「えっ、ちょっと待ってください。」
「証拠隠滅防止の為、捜査中ご不自由でしょうが、手錠を掛けさせていただきます。」
そう言うと強引に恭子のもう片方の手首を取り、柱を背にして両手を後ろ手に手錠で繋いでしまう。
「そんなことしなくても、私は何もしません。」
「規則ですから。」
男は冷たくそう言っただけで、恭子には顔も合わせず、傍の部屋にはいってゆく。もうひとりも、恭子の身体を嘗めるように恭子の様子を撮影してから、先の男へ付いて部屋に入っていった。
ガタガタと抽斗やら戸棚を開けている音だけが恭子には聞えてくるが、何を調べているのか繋がれた恭子には確かめようもない。
「あったぞ。」
背の高いほうの刑事の声がして、なにやらビニールの袋に入った白い粉のようなものを手にして出てきた。
「さっきの部屋のクロゼットの奥から出てきました。現物が見つかった以上、緊急の身体検査もする必要があります。失礼。」
そう口早に言うと、手にしたビニールの袋をキッチンのテーブルに置いてから、恭子の胸元に手を掛けた。
「い、嫌です。」
「奥さん、麻薬の現物が見つかっています。拒絶すれば、証拠隠滅幇助、公務執行妨害の現行犯になりますよ。」
男が言い切ると、恭子の肩から力が抜けていった。
男は恭子の胸元からブラウス越しに身体を探る。ブラジャーを上から探るようにしながら手を次第に下のほうへ伸ばしてゆく。腰の辺りまで両手で探りながら触診してゆくと、今度は腰の回りをまさぐり始めた。
ふと気づくと、もう一人の男がまさぐられる恭子の様子をずっと撮影している。
「何故、そんなもので撮るのですか。」
「捜査の公正を期する為です。この撮影されたフィルムは後日裁判の際の証拠となります。」
そうまで言われると恭子は拒めなかった。
男の手は恭子のフレアの付いたチェックのミニスカートを探っていた。恭子は家の中なのでストッキングは付けていなかった。ミニスカートの下はガードルをつけている。そのせいで感触が掴めないのか、男は執拗にスカートの上から、腰の付近を探っていた。
「失礼します。」
男はいきなりそう言うと、恭子の胸のブラウスのボタンを外しはじめた。男は素早かった。あっという間にボタンを3つ外すとシャツを押し開き指を中に入れて、恭子のブラジャーを調べ始める。ブラジャーの下から指を入れて、何か挟んでいないかを探っている。恭子は瘠せているほうだが、胸の大きさには自信があるほうだった。ブラジャーにはパットも入れていない。すぐに男もそれに気づいたらしく、ブラジャーの検査はそれで止めになった。
が、そのすぐ後、今度は男の手が恭子の両脇からスカートの中に挿し入れられてきた。
「い、嫌っ。やめてっ。」
叫んだ時には、男の素早い動きの中で、ガードルが膝まで下ろされてしまっていた。すぐに男の手が恭子の股間に当てられた。そして、丁度生理中だった恭子のナプキンを探り当てた。
「だ、駄目です。生理なの。やめて。」
が、男は恭子の言葉には一切構わなかった。
そのまま両脇からパンティを掴んで腰まで下ろし、股間に当てられていたナプキンを引き剥がした。恭子は恥ずかしさに真っ赤になりながら、顔をそむけて目をつぶった。
男は、恭子の背を向けて、ナプキンにナイフを入れている。おそるおそる恭子は男の様子を窺う。ナプキンは替えたばかりで、まだ汚れてはいない様子だった。
が、男は突然、意外なことを言い出した。
「ナプキンからも検出されました。不法所持の現行犯です。緊急逮捕します。」
男は腕時計をかざして、時刻を告げた。
「そ、そんな。何かの間違いです。そんな筈はありません。」
「奥さん。これからあなたが喋る一言ひとことは証拠として使われる可能性があります。あなたには黙秘権があります。宜しいですね。」
男はかすかに鮮血のついたナプキンを恭子の目の前にかざしてから、おもむろにビニール袋にしまい、さっきのビニール袋の隣に置いた。
そして二人の刑事は下着を膝まで下ろした格好のままで恭子を放置し、更に部屋の捜索へ向かった。恭子はなんとか下着だけでも、引き上げたかったが、柱を背にしているので、手錠を掛けられたままでは、どんなに身をよじらせても指が自分の腿までは届かない。そうしている間にも、恭子は自分の内股に生暖かいものが滴りおちてくるのを感じていた。
「生理のナプキンの中に隠すとは考えましたね。しかしよく見付けましたね。」
「いや、この業界ではよく使われる手だ。常套手段とも言える。」
刑事等が話している声が柱に繋がれている恭子に聞えてきていた。
恭子は考えていた。自分にはまったく憶えがない。だとすると、・・・。刑事は夫にも嫌疑がかかっているようなことをほのめかしていた。夫が、・・・。疑心暗鬼が恭子の頭の中を渦巻いていた。
刑事等は恭子のナプキンを大きな包みごと、洗面所の戸棚から取出してきていた。
「あの、せめて下着だけでも付けさせてください。」
恭子は懇願するような目で刑事等を見上げた。が、帰って来た返事は非情だった。
「身に付けている一切のものは証拠品として押収されます。いまは、現品を隠していた下穿きだけをまず押収します。」
そういうと恭子の足元に屈み、膝頭にとどまっていたガードルとパンティを抜き取った。恭子が下着を奪われる様は一部始終ビデオに撮られていた。
「身に付けていたものはしっかり記録しておいてくれ。」
そう言うと、背の高いほうの刑事は恭子の腰に手を廻し、スカートのホックを外した。チェックのミニスカートがはらりと足元に落ちた。恭子は脚をこすりあわせるようにして股間を隠そうとする。が、ビデオカメラがその様子をしっかり収めている。
「スカートも証拠品として押収しておいたほうがいいだろう。奥さん、あなたは今は麻薬不要所持の現行犯なのだから、プライバシーもなにも権利はありませんよ。」
男は冷たく言い放った。
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