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良子
 - 警察手帳を奪われた女巡査





第四章 繰り返される女巡査調教

 一

 良子が次ぎに手紙で呼び出しを受けたのは、それから一週間経った頃だった。手紙は日時と場所を指定していた。とある街中の通りに面した二階にある喫茶店だった。手紙にはその日の午後2時に喫茶店の窓際の席を取って、窓から見える通りの反対側の電話ボックスを見張るようにと書いてあった。それが何を意味するのか、良子も行ってみるまで分らなかった。

 1時50分には、その店に入り、コーヒーを注文してただ、時間が来るのを待った。人通りは少なくもなく、それほど多くもない、ただ普通の午後の昼下がりだった。
 ちょうど2時に時計の針が指し示した瞬間に、通りの蔭から一人の女が現れた。最初は見た風の女と良子は直感した。そしてすぐにそれがビデオで騙された女を演じていた人だったと気づく。
 その女は長めのフレアのついたスカートをひらひらさせながら歩いていた。まっすぐ良子が見張るように言われていた電話ボックスに向かっているように思われた。しかし、女がそこに到着する前に、一人の男がそのボックスに入った。その瞬間、女のほうはひるんだ風に見えた。電話ボックスに入った男は営業マン風のちょっと年のいった男で、汗を拭きながら客先らしいところに電話している風であった。女のほうは電話ボックスの少し前に立ち止まり、あたりを見まわしながら当惑している風に見えた。
 やがて、営業マン風の男は電話を終ってボックスを出た。その後、誰にもその場所を取られまいとするかのように、女のほうがボックスに飛び込んだ。が、すぐに電話をする様子もない。
 明らかに何かを躊躇っているように見える。
 やがて、おもむろに受話器を外し耳にあてた。そして何かダイヤルしている。しかし、良子は職業柄、その時に女は電話機に硬貨もカードも入れていなかったことを見逃していない。明らかに電話をしている風を装っていた。そして、何食わぬ顔で受話器を置く受け口のノブを下に押し下げていた。電話をしている振りをしながら、電話を待っている様子だった。
 女はあちこちに注意を配りながら、待っている風だった。そして突然びくっとしたようにして、押し下げていたノブを戻した。
 (電話が掛かってきた)瞬間に良子はそう判断した。
 女は、受話器から何やら指示を受けているように見えた。女が唇を噛むのが遠目だが、注意しながら凝視する良子には見て取れた。
 女は何食わぬ顔をしながら、受話器を握っていないほうの手で自分のスカートの腰の前にあてた。そして指ですこしずつスカートを手繰り上げはじめた。

 恐らくその電話ボックスに注目していた良子以外は、誰もその仕草に気づかなかったに違いない。電話ボックスで電話している只の普通の女が突然、スカートを手繰り上げるなどとは誰も思いもしないだろう。しかし、そこを注目するように言われていた良子には、当然ながらそれに気づいている。

 女はもじもじしながらもスカートをどんどん手繰り上げ、ほとんど股間すれすれのところまでたくし上げていた。女は俯いて泣いているようにも見える。
 突然、女の手は更にその掴んだ裾を持ち上げた。そのスカートの下の腿の付け根が露わになる。女は下着を付けていなかった。恥毛に包まれたその部分が丸出しになっている。通りを歩く誰ひとり、それに気づいた者は居なかったようだ。勿論、そこを見張っている良子と、おそらくそれを命じている犯人以外は。

 女はひとしきり、その恥ずかしい部分を晒した後、スカートをさっと戻し、受話器を叩きつけるように置くと、電話ボックスから飛び出るようにして走り去った。
 良子は、いまみていたシーンを夢のようにただ反芻していた。

 明らかにその女は誰かに命令されていた。それもどんな辱めも拒むことが出来ない状況の上での様子だった。その状況をつくるもとになったのは自分の奪われた手帳のせいであることも充分了解していた。そして、それを見せ付けられたのだ。

 辱めを拒むことが出来ない女を見せつけた意味は、自分にも拒むことが出来ないということを分らせる為であろうことは容易に想像がついた。拒めば、この女が餌食になるということなのだ。

 そして、この男からの命令は翌日再び郵便で届いたのだった。


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