良子捕縛

良子
 - 警察手帳を奪われた女巡査





第一章 奪われた警察手帳



 二

 電車が止まり扉が開くと乗客が一斉に降り始めた。みるみる車内は空いていく。乗客は数人を残して殆ど降りてしまった。人ごみが移動する中で良子のたくし上げられたスカートは元に戻されたが、逃れられないように二の腕を両側からしっかり捕まれている。
 がらんとしてしまった車内の空いた席に良子はひっぱられるようにして座らされた。男のコートの下には依然として冷たいナイフが良子の脇腹に向けて握られている。当分は、良子はただ男たちの言うとおりにするしかなさそうだった。
 男たちの視線が良子の下半身に注がれている。少し短めのスカートは良子のすらっと伸びた脚をあらわにしている。そしてスカートの奥は下穿きを奪われたまま何も着けていない。思わず良子は両脚を固く閉じた。しかし、その行為は男たちにある事を思いつかせてしまった。
 男の一人が良子の反対側の席にゆき、サングラスを通して良子の身体を嘗めるように見始めた。その男が顎で促すと、右隣のナイフを持った男が良子に低い声で命令した。
 「脚をもっと開きな。」
 男は促すようにナイフの先で、良子の横腹を突いた。
 脚を開けば、ミニスカートの奥まで丸見えになってしまうのは分かっている。他の乗客からは少し離れているので男たちの他には覗かれずに済みそうなのがせめてもの救いだ。仕方なく、良子は両脚を少し開いた。
 「もっとだ。」
 そう言われるのは分かっていたが、良子にはもう少しだけ開くのが精一杯だった。男は良子がもじもじしているのを見てとると、更に苛めにかかった。良子のスカートを少しずつ引っぱり上げ始めたのだ。良子の太腿はどんどんあらわになっていく。前の席の男からはスカートの奥はもう丸見えの筈だ。良子はもう観念して目を伏せて、されるがままになることにした。
 良子の前にいた男が立ち上がって来て、左側の男に何やら耳うちをしている。言われたほうの男はそれをきいてニヤッとする。そのニヤっとした男が今度は良子に命令した。
 「立ちな。立ってゆっくりとびらのとこまでゆくんだ。」
 (今度は何をさせようというのだろう。)
 良子は不安な面持ちで立ち上がった。男たちは押すように良子の後ろから付いてくる。逃げるチャンスはなさそうである。
 さっき耳打ちした男がポケットから別の紐を取り出した。そして何食わぬ顔で良子の背中に手を伸ばすと良子を後ろ手に縛っているロープに紐を通し、扉の脇に付いている鉄製の手すりに括り付けてしまった。
 あとの二人は良子を両側から囲むように立ちはだかって他の乗客たちに何をしているか見えないようにしている。
 良子を縛った男は良子の胸に手を伸ばすと、胸の内ポケットの警察手帳を抜き取った。
 「これは預かっておくぜ。. . . おっと、それからこれもな。」
 そう言ってさっき良子から奪い取ったパンティを広げてみせた。良子は恥ずかしさに奪い返そうともがいたが、両手の自由が効かない身では何も出来なかった。
 電車がまた減速を始めた。次の駅に着こうとしているのだ。男の手がまた良子の腰に伸びてきた。良子の後に手をまわすと、スカートのホックを外し、ジッパーを降ろしてしまった。
 「な、何をするの。やめて. . . 。」
 良子は必死でジッパーを元に戻そうとするが、手が届かない。そうこうするうちに電車はホームに入ってきてしまった。扉が開く。この駅も閑散としていて載ってくる人はいなかった。
 「じゃ、あばよ。」
 そう言うと、いきなり良子のスカートを下に引っぱり下げ、三人一斉にホームに飛び出た。次の瞬間、扉は閉まり良子ひとりが下半身を剥き出しにされて取り残された。電車は笑いながら手を振りはやしたてる男たちを残して、無情にも動き出していた。

 良子は一瞬乗客に助けを求めようかとも思った。が、自分の格好を思い出し、言葉を呑み込んだ。良子の車両は幸か不幸かさっきの駅でみんな降りてしまったようだった。良子はもがきながら、ロープをほどこうとしてみた。早くしなければ他の車両から誰かはいってきてしまうかもしれないし、次の駅に着くまでに何とかしなければ . . .、そう焦ればあせるほどうまくいかない。もがいているうちに、さっき膝まで降ろされてしまったスカートがはらりと床まで滑り落ちた。車内アナウンスが次の駅名を告げ始めた。電車がガクっと揺れてスピードを緩め始めた時、やっとロープが緩み始めた。
 良子がスカートを拾い上げるのと、扉が開くのが殆ど同時だった。学生服を着た一群がどっと乗り込んできた。素早く手を後ろに回してスカートのジッパーを引き上げた。何人かの学生が良子の足元に落ちているロープを見て怪訝そうな顔をしているが、良子は知らぬ顔をして電車を滑り降りた。
 (警察手帳を奪われたのは不覚だった。何としても取り戻さねばならない。)
 しかし良子には何の手掛かりもなかった。その良子のスカートの下を冷たい風が吹き上げてきた。慌てて、良子は両手でスカートの裾を押さえる。
 (ともかく、どこかで下着を手にいれなくちゃ。)
 良子は降りる筈のなかった駅の改札口に向かって歩き始めた。


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