ホームの良子

良子
 - 警察手帳を奪われた女巡査





第一章 奪われた警察手帳


 一

 その日も良子はいつものように中央線に乗込んだ。出で立ちは紺のブレザー、シルキーな白のブラウスに燕滋のタイ、下は白の短めのタイトスカート。ストッキングはわざと着けていない。一目で男の目を惹くようにと考えた格好である。
 良子は二三歳、婦人警官になって二年目である。毎月一回、軽犯罪防止委員会の派遣ということで都内の電車の巡回が廻ってくる。良子の住まいは中央線沿線の為、当番の日は中央線を数回往復してから警視庁へ出勤することにしている。つい先月の当番の時も痴漢行為の青年を良子の機敏な処置のおかげで捕えたばかりである。
 駅を出て少ししたところで誰かが急に良子の手を捕えた。電車はかなり混んでいる。
 (まさか、痴漢では...。警察官だとも知らないで。)
 良子は日頃訓練している合気道のわざをためしてみようかと振り返ってみた。すぐ後ろにいたサングラスを掛けた若そうな男が良子に何かを渡そうとしている。今はやりのヘッドホンのようなものである。男は無言でそれを掛けてみろというような合図をした。
 不思議な面持ちで良子は渡されたヘッドホンを耳にしてみた。何も聞こえないと思った次の瞬間、低い殺したような声が聞こえてきた。
 「よく聞け。じっとして動くんじゃないぜ。へたに動けばナイフでぐさっとやるぜ。」
 良子はぎょっとして後ろを振り向く。男の手にキラッと光るものが見える。
 「後ろを向かずにじっと前を見ていろ。抵抗すれば怪我をするのはおまえだけじゃなくて周りの人間も血だらけになるんだぜ。騒ぎを起こしたくなかったらおとなしく黙って言うことを聞くことだ。」
 それは一方的な命令であった。良子は背中の神経がピンと張り詰めるのを感じた。後ろに神経を集中していると次の声が聞こえてきた。
 「ナイフを持っているのは一人だけじゃないんだからな。変な気を起こすと容赦しないからな。分かったか。わかったらゆっくり、うなずくんだ。」
 良子は周りを横目で見渡すと、今まで気付かなかったが、良子の前後に良子を囲むようにして同じようにサングラスをして黒いコートを着た男たちが三人いる。片手をコートのポケットにつっこんでいるのは、ナイフを握っていることを示しているようだ。
 とりあえずじっとしていることにしようと良子は決心した。ここで変なことになると取り返しのつかないことになる恐れがある。
 (まさかこのひとごみの中だもの。彼等もそう簡単には変なことは出来ない筈だわ。)
 良子はヘッドホンの声が録音テープのものであることに気がついた。
 (これはかなり計画的なものだわ。)
 良子は考えながら、じっと彼等の出方を待った。ヘッドホンから次の声が聞こえてきた。
 「目をつぶって両手を後ろに回せ。」
 良子はとりあえず男たちの言うことを黙って聞くことにした。その良子の手を男が荒っぽくつかんだ。
 良子の手首になにやらロープの様なものが回され、あっという間に良子は両手を後ろ手に縛り上げられてしまった。
 かなり混みあった電車のなかである。。良子もまさか縛り上げられるとは思ってもみなかったので油断していた。しかし周りの乗客は誰も気付いた様子はなかった。

車内緊縛


 良子は後ろ手に縛られており、抵抗できない。男たちは情け容赦なく良子の下半身に手を伸ばしてきた。次第に良子のスカートはずりあげられていく。もう一人の男が良子の股間をまさぐる。
 (や、やめて...。)
 思わず声が出そうになるのをぐっとこらえた。しかし、ここで声を出せば恥ずかしい思いをするのは自分なんだと思い直し、唇を噛みしめてこらえた。
 男の指はしつように良子の最も敏感な部分を責めまくる。逃れようとするのを良子の背後の両手がしっかり抑えつけている。
 感じまい、感じまいとするのだが、濡れてきてしまいかと不安になる。
 突然男の手が脇腹のほうにまわされた。指が良子の下着にかかった。
 (このままじゃパンティをおろされてしまう...)
 しかし逃れる術はなかった。男の手はゆっくり楽しむように良子の尻を這いながらパンティをずり降ろしていく。降ろされた小さな布切れが良子の太腿で止まった。
 良子はストッキングを着けてこなかったことを悔やんだ。
 (汚れていなかっただろうか。)
 ふとそんな思いが良子の脳裏をよぎる。下着を取り替えたのはゆうべのことである。
 そんな思いを見透かされたのか男の指が良子のパンティを広げようとしている。
 「ゆ、ゆるして...。」
 涙ぐみながら小声でつぶやく。しかし男はそれをあざ笑うかのようにニヤリとしている。
 「いい格好だぜ。たっぷりかわいがってやるからな。」
 男の口元はそう言っているかのようだった
 良子の腰を押さえていた手は良子の柔らかな脇腹をまさぐりながら次第にずりあがってきた。そしてその手はゆっくりと後ろからはさみ込むように豊かな胸のふくらみをまさぐってきた。良子は我慢しきれなくなりそうで、目を閉じ、歯をくいしばっている。
 後ろの男は良子を抱きかかえるようにぴったり身体を押し付けてきた。後ろ手に縛られた良子の手に男の股ぐらが押し付けられている。それは、熱く、そして固く怒張しているようだった。
 突然良子は自分の下穿きと太腿のあいだに冷たいものが差し込まれたのを感じた。そしてそれが小型のナイフであるのを次の瞬間、感じ取った。男の意図を理解するのにながくはかからなかった。あっと思う間もなく、良子の太腿を締めつけていた布切れは腰骨のところで音もなく切り裂かれた。男の手が反対側にもまわされ、もう一方の端も切り裂かれた。ふっと下半身が自由になった気がしたと思った時には、男の手に自分のパンティを奪い去られていた。
 目をつぶった良子の前に自分の姿が浮かんでくる。
 ぎゅうぎゅう詰めの満員電車の中で、三人の男たちに取り囲まれ、両手の自由を奪われパンティも奪い取られてしまった。しかも、スカートはたくし上げられたままなので、いちばん恥ずかしい部分は剥き出しのままの筈である。
 (この上、どんなひどいことをするのだろう。他の乗客に気付かれたらどうしよう。)
 そう考えているうちに、次第にまわりの乗客の目が心配になってきた。自分の今の格好が人前にさらけ出されたら、そう思うと耳たぶが急に熱くなってきた。
 (なんでも貴方たちの言うとおりにしますから、ここでこんな真似はさせないで下さい。. . . )
 出来ればそう口に出して言いたかった。良子は潤んだ目を男たちに懇願するように向けた。その時、電車は次の駅に向かって次第に速度を落とし始めた。


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