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冠木門





冠木門 あとがき

 冠木門はかなり古い自作小説で、おそらく良子に次いで二番目位に作られた1980年代初期の作品だったと思われる。
 その頃棲んでいた家の割と近くに、広い敷地に屋根の付いた古い門がある屋敷があった。その門を何と言うのか、ずっと調べていた。80年代となるとまだインターネットも普及していない頃で、調べる方法もかなり限られた。それでも何かの日本家屋の様式について説明している書籍のようなもので「冠木門」と呼ばれることを知る。最初の頃は読み方も判らず、(かぶらきもん)などと思っていたが、後に(かぶきもん)であることを知る。
 この冠木門が出てくるシーンの小説を作ってみようとずっと考えていて、頭には古い黒澤明監督の映画、羅生門をイメージしていた。その後、実際の小説を書き進めるに至ったきっかけとなった画像が冒頭のものだ。
 アラーキーと、(アナーキー)をもじって自称していた大正から昭和初期の日本風俗写真を得意としていた写真家、荒木経惟の写真にインスピレーションを受けたのだ。掲載されていたのは、その当時初めてそういう雑誌があることを知った、「スナイパー」という写真誌だった。雑誌、スナイパーにはその手の写真が多く掲載されていて、この雑誌の写真にインスパイアされて書いた小説も後日沢山出来ている。その一番最初の作品と言えるだろう。
 この作品で描きたかったものはストーリーではなく、シチュエーションだ。妄想小説にはそうした色合いが多分にある。

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