騙された新人女優とマネージャー
第二部
二十三
(あっ・・・。)
由里の膝頭をドアップで撮っていた見習いカメラマンの杉崎は自分のカメラのモニタに由里の膝頭が緩んで開かれたミニスカートの奥が映りこんでくる。同じ画像を自分の数あるモニタの中から見ていた芦原がすかさずインカムを切り替えて杉崎に指示を送る。
『杉崎、今だっ。』
指示を受けた杉崎は慌ててカメラ脇のピンポイントスポットのスイッチを入れる。
(えっ? ま、まさか・・・。)
いきなり自分のカメラのモニタに映った由里の緩んだ膝頭の奥に映ったピンポイントスポットの灯りに照らされた裾の奥には当然映りこんでくると思っていた純白のショーツではないものが撮り込まれていたからだった。
「はーい、カット。番組、終了でーすぅ。お疲れ様でしたぁ。」
メインフロア中心でディレクターが手を挙げて番組終了を告げる。その声を聞く前にADの芦原は撮影スタジオを横切って見習いカメラマンの杉崎の元に歩み寄る。
「うまく撮れたか、杉崎っ?」
「あ、ええ。多分・・・。あ、あの・・・。芦原さん。」
「ん? 何だ、杉崎。」
「いや、その・・・。もしかして、あの手塚って娘。スカートの下、何も穿いてなかったってことは・・・?」
「何バカなこと、言ってんだよ。いいから撮り終った映像のSDカードを寄越せ。これから編集室に持ってゆかなくちゃならないから。」
「あ、そうですね。はいっ、これです。」
杉崎からSDカードを受け取った芦原が足早に去っていくのを見送りながら、杉崎は首を傾げる。
(確かに何も穿いてなかったように見えたんだがなあ・・・。もう一度再生し直して確かめたかったんだが。ま、いいか。)
釈然としない思いのまま、ひな壇を降りようとしている手塚由里の方を振り返ってみる。ちょうどひな壇を横に渡って仮設階段を降りてこようとしていた。短いスカートが軽く翻っているがその奥までは覗いてこない。杉崎はその由里が降りてこようとしている仮設階段の脇を通り過ぎてみたい誘惑に駆られる。自然と足はそちらの方向に歩み始めていた。
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