妄想小説
恥辱秘書
第二十一章 美紀のしくじり
二
美紀は芳賀に命じられて、原と二人で裕美の様子を観に行かされたことで、芳賀が秘密にしていた倶楽部の場所を今では知っていたのだ。その倶楽部は芳賀の古い知り合いが経営しているらしいということまでも聞きだしていた。
芳賀には内緒で長谷部を案内することにしたのだった。芳賀から止められそうな予感がしたからだ。前回の原にせよ、裕美に温情をかけようとする者が居ることが美紀には許せなかったのだ。美紀は部屋に案内される前に待合ラウンジで長谷部と暫く待っている間に、持参したアタッシュケースの中身を長谷部にちらっと見せておく。
「本当に客のいう事を何でも聞くのかどうか、試すのにお道具を少し、借りて持ってきました。」
美紀が少しだけ開いたアタッシュケースの中を長谷部が覗くと、中に手錠、縄、ペニスを模ったバイブレータ、鞭、浣腸器などが収納されているのがちらっと見えた。
長谷部は思わず、喉をごくんと鳴らしてしまう。
「お好きな物を試してみていいですわよ。私のことなら無視していて結構ですから。」
美紀はまたも謎めいた微笑みを浮かべて長谷部を試すように観ていた。
「お待たせ致しました。裕美と申し・・・。あっ・・・。」
深々と頭を下げてお辞儀の姿勢を取った後、客のほうへ顔を向けた裕美は思わず叫んでしまった。目の前に沢村と美紀が居た時以上の驚きだった。
「は、長谷部専務・・さま・・・。」
「ふふふ。ひさしぶりだね、裕美くん。」
「ウチの専務がね、裕ちゃんの噂を聞いて、仕事ぶりを是非見てみたいって言うのでお連れしたのよ。お客さまには絶対服従っていう噂・・・。」
意地悪そうに横から美紀が声を掛ける。裕美にこれから受けるであろう仕打ちを宣告するようなものだった。
「な、何でも裕美にお命じください。お客様のご希望されることでしたら、何なりとも仰せの通りにさせて頂きます。」
いつもの台詞を口にした裕美だったが、前回のことがあるだけに、最後の語尾は震えていた。
「じゃ、専務。そこにお掛けになって。私はお隣に。裕美、こっちへきて、このアタッシュケースを持って真正面に座るのよ。」
美紀がてきぱきと場を仕切る。裕美は恭しくお辞儀をすると、アタッシュケースを受け取って長谷部の真正面の低いスツールに腰掛ける。
「今、お酒のご用意をさせて頂きます。」
「あっと、その前にそのアタッシュケースを開けてご覧よ。心の準備が要るだろうから。」
酒類の並べられたワゴンのほうへ向かおうとする裕美を美紀が制する。言われた通りにアタッシュケースを自分のほうへ向けて開いた裕美の表情が凍りつく。
「あ、あの・・・。」
「お酒の用意はいいのよ。私が代わりにしてあげるから。裕美は専務のご希望に従うほうに専念してね、いいこと。」
最後は有無を言わせぬ口調になっている。
(ゴ、ゴホン)
長谷部がこぶしを手にあてて咳きをしてから喋り始めた。
「ああ、美紀くん。ここは、女性の君にはちょっと席を外していて貰いたいんだ。わたしがどんなことをするのか、見られてちゃしにくいこともあるから・・・。」
言いよどむように長谷部が言うと、ちょっと眉を吊り上げた美紀だったが、すぐに頷いた。
「そうですよね。ちょっと他人には言えないようなこともあるかもしれないですものね。女の私が居たんじゃ、しにくいこともあるでしょうから。私は暫く席を外しますから、存分に可愛がってあげてね。どんな野獣に変身したってお二人だけの秘密ですからね。それじゃあ。」
そういうと、美紀は名残惜しそうにしながらも部屋を出てゆくのだった。
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