自転車乗り
三
早く男達の所へ戻って何とか頼み込んで手首の針金を解いて貰わなければと逸る気持ちを抑えながらペダルを漕いでゆく良子の行く手に男達の一人が見えてきた。しかしその男は別の見知らぬ中年男と話をしている。
(誰だろう。さっきまではあんな男は居なかった筈・・・)
不審に思いながら近づいてゆくと、良子をこんな目に遭わせた男の一人はくるりと踵を返して立ち去ってゆく。代りにさっきまで話し込んでいた別の新たな中年男が良子の方を振り向く。そのすぐ近くまで辿り着いた時にその男が急に両手を広げて通せんぼのような格好をするので、良子は急ブレーキを掛けて停まらざるを得なかった。
「通してください。さっきの人に私は用があるのです。行かせてくださいっ。」
しかし中年男は手を降ろすとさっと良子の両手首が括り付けられているドロップ型のハンドルバーの上の部分についているセイフティレバーというもう一つのブレーキレバーをしっかり掴んでしまう。良子が括り付けられているのはドロップハンドルの下の方なので正規のブレーキレバーにやっと手が届くだけで上部のセイフティレバーには括られたままでは手が届かない。そのセイフティレバーをしっかり握られてしまったので、最早良子がペダルに力を篭めて踏み込んだところでタイヤにブレーキシューが食い込んでいるので、ぴくりとも動かせなくなってしまった。
「お願い、それを離してっ。」
「何をそんなに急いでいるんだい? おっ、そうだ。ここにいい物がある。」
そう言って中年男が取り出したのは短くて太いワイヤ式のロック錠だった。片手でセイフティレバーをしっかり掴んだまま、もう片方の手で前側のタイヤのスポークをフロントフォークの軸と共に繋いでしまう。それでもうセイフティレバーから手を離しても自転車は前に進めなくなってしまう。
「両手をそのハンドルバーに繋がれているんだってな。さっきの男から教えて貰ったよ。」
中年男はいやらしそうな目で良子の繋がれた部分を確かめている。
「お願いです。タイヤのロックを外してください。」
「まあ、そう急ぎ為さんな。そうか。ハンドルからは手が離せないって訳だ。それじゃ、こんな事されても何も抵抗出来ないんだな。」
そう言って、男は良子の短いスカートから剥き出しの太腿の内側をするりと撫でる。
「嫌っ、止めてっ。」
「おや、お嬢さん。そんなに大きな声、挙げないほうがいいんじゃないかな。周りの皆が注目しちゃうよ。」
良子ははっとして、辺りを見回す。まだ、窮地に立つ良子の様子に気づいた者は居ないようだった。しかし、悲鳴でも上げれば注目の的になってしまうのは間違いなかった。
中年男は良子の太腿の内側に当てた指の先を更にずりあげる。指が短いスカートの裾の中にまで食い込んでスカートを少したくし上げてしまう。
「や、やめてください。」
良子は小声になって必死でお願いするしかなかった。しかし男は通行人たちに背を向けるようにして良子の横に立つと、良子が跨いでいるフレームパイプに手を掛け、人差し指を伸ばして通行人達には気づかれないようにしながら良子のスカートの裾に手をいれてくる。やがてその人差し指が良子の頼りない薄手のショーツを探り当てる。そんなに背が低いほうではない良子だったが、大型の男性用自転車なので爪先立ちになってフレームパイプを跨いでいてもパイプが股間に食い込むほどだった。その股間の食い込んでいる部分に男は指をこじ入れようとしていた。
「だ、駄目よ。そんな事・・・。ああ、だめっ・・・。」
男は良子が抵抗出来ないのをいいことに、どんどん指をくねらせてショーツの中に侵入してくる。そしてとうとうフレームのパイプが食い込んでいる陰唇の割れ目に鉤のように曲げられた指の先が更に割り込んできたのだった。
「ああ、だめえぇ・・・・。」
最早良子はあまりの責めに全身の力が抜け掛かっていた。
「ふふふ。そんなに気持ちがいいか。そしたら今度は後ろの穴でも試してみるかい。」
「えっ、何ですって。」
良子は男の言った言葉の意味に気づいて戦慄で身体を震わせる。
「や、やめてっ。そんな事・・・。」
しかし男は陰唇に深く差し込まれた指を抜き取り、その濡れぞぼった先を良子にこれみよがしに見せつけてからそのまま今度は良子の反対側に廻り込み、サドルの下から通行人たちに気づかれないようにスカートの中に手を突っ込む。今度は良子の身体自体が盾になって男の指の侵入を隠している。今度も良子が跨いでいるフレームのパイプに沿って指がショーツの布地を掻き分けるようにして侵入してきた。
「そ、そこは駄目っ。」
「へへ、あんまり身体を動かすと皆に気づかれるぜ。いいのか?」
そう言われてしまうと良子は身を捩じらせて拒もうとするのを止めざるをえない。指の先が既に濡れているせいか、良子の菊の座はするりと男の指を受け入れてしまう。
「あうっ・・・。」
良子は痛みよりもおぞましさに身を震わせる。
「どうだ。いい気持かっ? そしたらこの指先を抜いてやるからお前の口で綺麗にして貰おうかな。」
「い、嫌です。そんな事っ。」
「そしたらいつまでも車輪のロックは掛けたままにしておくぞ。それでもいいのか。」
「ああ、そんな・・・。」
「じゃあ、指をしゃぶるのか・・・。」
「本当にロックを外してくださるのですね。わ、わかりました。」
「聞き分けのいいやつだ。それっ。」
尻の穴から男の指が抜かれるとすぽっという音がしたような気がした。すぐさま男は抜いた指を良子の顔面に晒す。良子は顔を顰め、目を瞑って口を薄く開く。その唇に男の指が突き立てられた。あまりに異様な光景だった。自転車に跨った女が横に立つ男の指を咥えてしゃぶっているのだ。皆、何事が起こったのかと一斉に注目し始める。
チュパッという音と共に男の指から顔を背けるとペッと唾を吐き出す良子だった。
「そらよっ。」
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