若妻嬲り

良子
 - 警察手帳を奪われた女巡査





第六章 捨て身の逆転

 二


 恭子の話では、良子の時と全く同じで目隠しをされて連れ込まれるので、コスプレ倶楽部が何処にあるのかは全く知らされなかったそうだ。呼出しも知らない番号のところから電話が掛かってきてそこへ赴き、目隠しをして待つように指示されたのだという。
 恭子の元を一旦辞した良子は彼らを捉える作戦を立て始めるのだった。その作戦実行の為に使えるのは同じ秘密を共有する良子と恭子の二人しかいない。二人だけで彼らと対峙するにはお互いが協力しあうしかないのだった。

 「いいこと。これが無線機。このスイッチをいれるとずっと無線を発しつづけるの。それを警察の基地局が感知すると、パソコン上のこのサイトに位置情報を送ってくるの。お互いが無線機とその位置情報を解析するパソコンを持って、片方が潜入したら、もう片方がその場所を探るの。どちらが潜入することになるかは、その時の彼らの指示次第ね。だからお互い、覚悟を決めておく必要があるの。どう、出来る?」
 良子は備品室から訓練の為と偽って借りてきた無線機と解析装置を恭子に使い方を説明しながら作戦を指示していったのだった。

 二人が作戦を立てて待受けることにしてから最初に呼出しがあったのは、恭子のほうだった。良子は無線機を隠す場所としてロケットになっているペンダントヘッドを選んだ。人妻を演じている間に外されないものを選ぶ必要があった。無線機を外されて移動させられたら追尾出来ないからだ。ペンダントヘッドの奥に無線機を仕込むとその上に夫の写真を貼りこませる。夫から貰った贈り物のペンダントを着けたまま、不貞行為をさせられるというシナリオだった。
 良子は恭子が呼び出しを受けた公園から少し離れた場所で、車から恭子を降ろす。
 「いいわね。ペンダントは何のかんのと言って外させないこと。夫から送られた大事な品物なのですと言うといいわ。私が場所を突き止めるまでうまくお芝居をしてね。」
 「わかったわ。大丈夫よ。私に任せて。」
 力強く言う恭子の肩を一旦抱き寄せてから送り出す良子だった。

 「例のもの、持ってきたか。」
 「はい。言いつけ通りにしましたので、ちゃんと録れていると思います。」
 恭子がコスプレ倶楽部に着くなり男たちに手渡したのは小型ビデオカメラが内部に隠されたバッグだった。恭子は男たちから事前にそのカメラ入りのバッグを渡され、夫の武志が久々に単身赴任先から戻ってきた夜、夫の様子を一部始終盗撮していたのだった。何に使われるものかは判らなかったが、言われるとおりにするしかなかったのだ。カメラ入りのバッグを渡すと恭子は再び目隠しをするよう命じられる。何時も通り、エレベータを使って地下へ降りてその部屋の扉の前に立つまでは目隠しはしたままでいるよう命令されていた。

 ガチャリ。
 恭子が自分で開けた鉄の重たい扉が背後で閉まる音がする。真っ暗な中に二つのスポットライトが強烈な光で恭子の方を照らしているので、客の様子は逆光になってよく見えない。その恭子の目の前に何かがドサッと落とされた。荒縄の束だった。
 (縛られる・・・。)
 そう予感すると、身体が自然に後ろずさりする。しかし男の手が伸びてきて恭子の肩を鷲掴みすると男のほうに引き寄せられ、手首が乱暴に捩じりあげられた。その手首に荒縄が巻かれてゆく。
 「ああ、縛らないで。お願いです。いやっ・・・。」
 必要以上の抵抗は禁じられているものの、抗う振りはしなければならない。嫌がる素振りをする恭子の様子に男が余計に感じてくるようで、必死になって抑え込み恭子を後ろ手に縛り上げる。
 「ああっ、解いて。ほどいてくださいっ・・・。」
 床の上に両手を縛られて転ばされた恭子が顔をあげてみると男は顔半分の目の周りを蔽う仮面を付けている。
 「ふん、縛られてよがっている癖に。さ、こっちへ来い。」
 縄尻が引かれ、恭子は部屋の真ん中付近に天井から垂れ下がっている鎖の真下に引っ張っていかれる。余った縄が恭子の豊かな胸の上と下に二重に巻かれて胸と腕を縛り付けられると縄の端が鎖に繋がれる。部屋の隅で滑車が廻ると、恭子を吊っている鎖が巻き上げられていく。もう爪先立ちでやっと立っているまで引き上げられてしまうと、恭子は身動きも出来なくなってしまう。
 突然、真っ暗闇だった目の前の壁が明るくなる。真正面の壁にスクリーンが設えてあるらしく、そこに何処からか映写機の光があたっているのだった。
 「何っ? えっ、これって・・・。」
 突然映し出されたのは、恭子が置いておいた隠しカメラが撮影した夫の姿だった。
 「へえ、こいつがお前の夫かあ。さあ、今日はこの前でお前が犯されて感じるんだ。夫に見られていると思うと燃えるよなあ。」
 恭子は耳に息を吹きかけられているかのように耳元で囁かれる。
 「嫌っ。そんな夫の前で辱められるなんて・・・。いやよ。」
 「本当に嫌かどうか、これから確かめてやる。ほらっ、ここがもう疼いているんだろう。」
 「あ、嫌っ。そんなところ、触らないで。ああっ・・・・。」

 良子は無線機から発信される位置情報が停まったところで、その場所へ車で移動する。都心の裏通りの一角をその発信機は指し示していた。
 無線機の位置情報が再び動き出したのは、それから2時間ほど経った後だった。良子の予想どおり最初に恭子が拾われた公園にまっすぐ向かっていた。公園の脇に付けるだろうことは予測していたので、近回りして先に公園の脇の暗がりに停めると車がやってくるのを待ち受ける。
 やがて一台の黒塗りのワゴン車がやってきて、恭子らしい女性の両脇を抑えた二人組の男が車から降り、公園中央まで女性を引き立てていく。その間に良子は車に近づき車種とナンバーを確認し、念の為に別の発信機を車にも付けておく。
 車の追跡は訓練を受けているので慣れていた。見失うこともなく、気づかれることもなく、ワゴン車を追って青梅街道を西に向かう。そしてやってきたのは八王子の郊外にある古そうな一軒家の洋館だった。恭子が拉致され一時期監禁されたのはここの地下とみてほぼ間違いなさそうだった。
 「あ、恭子さん。大丈夫だった?」
 「ええ、大丈夫よ。今回も恥ずかしい目に遭わされただけで身体は犯されなかったわ。」
 「そう。よかったと言っていいのかしら。でも、おかげで奴等のアジトは突き止めたから。これからそっちへ向かって次の作戦を相談したいの。いい?」
 「勿論よ。待ってる。」

 その次に呼出しを受けたのは今度は良子のほうだった。
 「どうする、恭子さん?」
 「勿論やるわ。絶好のチャンスだもの。良子さんが時間稼ぎさえしてくれれば、私が忍び込む。」
 「わかったわ。危険はもう覚悟の上よね。忍び込むやり方は私が教えるから。よく聞いて。」
 良子は事前に下調べして合鍵まで作った上で、恭子に忍び込む手順を教え込むのだった。


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