良子
- 警察手帳を奪われた女巡査
妄想小説 良子 あとがき
妄想小説、良子はつい先日の2018.3.19に脱稿しているが、書き始めは非常に古い。記録は残っていないが、個人用ワープロを購入して一番最初に書き始めた小説だった筈なのでおそらく1987年の事だと思われる。31年前ということになる。
とはいっても、31年前に作ったのは第一章にあたる部分であり、しかも現在では五つの節に別れているが、当初は三つの別々のプロットだった。後日、これらをまとめて一篇にすることになる。更に第二章から第四章までの大半は90年代前半に作っている。最後の第五章のみが今年の2018年に作られて、全体として多少修正され一つの完結した作品にまとめられたものである。
最初の妄想は冒頭の一枚の画像から発想している。モデルは川島なおみで、80年代のおそらくは初頭に出版された男性用雑誌GOROに掲載されたグラビアのうちの一枚である。その当時はまだ青山学院大学在学中で、モデルデビューした直後ぐらいではないかと思われる。
タヒチで撮影された一連のグラビア特集のうちの一枚で、自分でスカートの裾を捲り上げて、あわや下に穿いているものが見えてしまうのではないかとハラハラさせられるような絵面だった。それにヒントを得て、女警官が何かの弱味を握られて、自分からスカートを捲るように命じられるシーンというのが最初に思いついた光景で、そこからストーリーを膨らませていったのだった。
30年も前となると、社会の様々なものが大きく変革してしまっている。その最たるものが電話だ。1980年代にはまだ携帯電話は普及していなくて、80年代終り頃にやっと自動車電話から派生した肩下げ式の移動用無線電話が極一部で使われるようになったに過ぎない。その為、犯人というか悪党どもから指示される命令は70年代から普及したFMを用いたワイヤレスマイクを発信源とし、受信はラジカセと呼ばれたカセット付のAM・FM対応ラジオ受信機という想定にせざるを得なかった。それが2018年で主人公が秘密のコスプレ倶楽部に出演させられるシーンではさすがに携帯電話が使われる設定になっている。
全体を通して時代の整合性を取るような事も考えたのだが、やればきりがなくなってしまうので、必要最小限に留めて極力オリジナルを書いた時のままで変更しないようにしたので、前後で多少違和感が出てしまうのは否めない。書き始めた時にはまさか完結するのが30年後だとは思いもしなかったからである。
その他で言えば、ストーリーの展開上大事な小道具である警察手帳がある。ストーリーには直接は関係しないものの、80年代、90年代は黒革の本当の手帳だったものが、2000年以降にはバッチが付いた手帳機能のない証明書に変ってきている。
手錠も80年代から2000年代のどこかで、銀色に光るものから黒く塗装されたものに変更されている。但し、手錠の色まではストーリーには出てこないので直接の影響はない。
第五章以降に出てくるコスプレ倶楽部なるものも当初の80年代には無かったものに違いないが、何時頃から世の中に出てきて、何時頃廃れていったのかもよく判らない。
妄想小説、良子はそうした意味で、起稿から脱稿までもっとも長い時間が掛かっているエポック的存在の小説なのである。思えば、妄想の発端となった川島なお美も最初のグラビアでは20歳前後の筈で、もう既に54歳で亡くなって2年半が経過しているというのも感慨深いものがある。
2018.3.23
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