妄想アイコラ
千里 騙し打ち
「 えっ、これっ・・・。昨日のリハーサルの時と衣装が違うじゃないの。」
本番前の衣装室でコスチュームを取り上げた千里は吃驚して声を挙げる。昨日リハーサルでステージに立った時に身に纏ったのはミニ風に見えるキュロットだった筈だ。しかしその時、千春が手に取っていたのは同じ色の同じ生地で作られたものだがキュロットではなくミニスカートなのだった。
(それに、このミニスカート。昨日のキュロットより明らかに丈が短いわ・・・。)
「ね、これっ。昨日のリハと違う衣装なんだけど。」
千里はすぐ傍に居た女性スタイリストに声を掛ける。
「あ。なんかそれ、プロデューサから差し替えが入ったみたいなんです。Vをチェックしたプロデューサが昨日のじゃ、本当のオバサンになっちゃうからって換えさせたみたいです。」
「え、事務所はOKだしたの?」
「みたいですけど。」
「どうしよう。今日はキュロットだからって安心してたからアンスコも用意してないわ。」
千里はもう本番まで時間が無いので取り敢えず現場で抗議することにして用意されたミニスカートを自分の生ショーツの上に穿くと本番のスタジオに急ぐ。
「ミニスカートにするなんて聞いてないのでアンスコも穿いてないんですよ。」
「ああ、大丈夫、大丈夫。パンチラが映るようなアングルじゃないから。安心してっ。」
ディレクターの言葉に不審を抱きながらも、もう本番まで時間がなくそのまま千里はステージに立ったのだった。
しかし千里には内緒でオンエア用のカメラとは別にローアングルのカメラが用意されていたのだった。ステージに上がった千里にはもうカメラの位置など目に入らないのだった。
「今日はいい画が撮れたようだな。」
ディレクターの横に立つプロデューサが声を掛ける。
「ええ。本番で使えないのは惜しいですが、裏のブローカーには高値で売れますね。」
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