typhoon

エッセイ


台風襲来時のお約束


 今年は台風の被害が多かった気がする。純粋に統計学的に観ている訳ではなく単なる個人の感想だが、多くて、大きくて、被害も甚大だった気がする。
 また、日本付近に来て東から西へ流れる奇妙なルートの台風も多かった気がする。確か、ひとつふたつではなかった筈だ。
 それにつけても・・・ではないが、台風が襲来するといつも思うことがある。台風報道の中でのお約束の映像だ。街中を風に煽られる人のシーンの中で必ずスカートを煽られてあわやというシーンを見せる女性の映像だ。
 風で煽られて捲り上げられたスカートの女性を撮って流したら、盗撮ではないにせよ、普通は問題となる。大きなキー局が正々堂々と流せるようなV(ブイ)ではないだろう。
 しかしながら、台風というと必ず一回や二回はそういう映像を各局(公共放送でもご多聞に洩れず)が流している。
 どうしてもそういう映像を撮らずには居られないカメラマンが居るのだろう。そういう映像を選ばずにはいられない編集者が居るのだろう。そしてその背景には、そういう映像を期待してみている視聴者が居るからなのだろう。
 今年、そしてここ最近の年の中でも最も大きかったと呼ばれる今年の台風21号でもそんな風景は見られた。台風が上陸しそうかしたかという頃、大阪の道頓堀で撮られたブイだ。普通でみても相当短いと思えるスカートの女性が強風の中、カメラに向かって近づいてくる。お約束と言わんばかりに真正面からスカートが捲れる。その事を愉しんでいるかのように慌てて抑えるでもなく何度も裾を翻しながらカメラの前を通過していく。そしてカメラはその女性の後をずっと追っていく。私の覚えている限りではそのブイは3度くらいは使われた。しかし、時を負うにつれて、もっとショッキングなシーンの映像が次々に撮られたせいで、その映像はインパクトに欠けるとされたようで、その後再生されることは無かったと思う。何せ、自転車置き場の屋根が自転車ごと吹き飛ばされたり、大きなビルの足場が崩れて倒れてきたり、極め付けは大型タンカーが風に流されて関空の高架路に激突して大破させたのだ。これではスカートが捲れたぐらいの映像はインパクトもくそもない。
 ところで、台風の時にスカートが捲られる映像は肖像権などをあまり気にしているように見えない。そういう映像が撮られてしまうのは不可抗力によるもので、意識して狙っている訳ではないという言い訳が通用するのかもしれない。台風による風の強さを伝えるイメージもインパクトも確かに強烈にはある。しかし一方で刺激的であるのも確かだ。
 男性が女性のスカートの下を覗いてみたいというのはDNAに組み込まれた本能ではないかと私は思っている。また同じ様にスカートの中を男性に見られてしまうかもしれないと思いながら、短いスカートを穿かずにはいられない女性が居るのも確かだ。これもDNAに組み込まれた本能なのかもしれない。
 台風が来るといつも考えてしまう事だ。


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